第一回島清ジュニア文芸賞「散文賞」(中学生の部)「幸せを追い求めた賢治の人生」

ページ番号1002771  更新日 2022年2月15日

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美川中学校3年 関野祐平

この本を通して宮沢賢治の生涯を知ることで、僕の心に強く刻まれたことがあります。
それは、
「自分自身で決めた道を進む」
ということです。賢治の人生は、普通の人と比べると短く、挫折の多いものでした。しかし、その人生は賢治にとって、とても内容の濃い充実したものだったのではないか、と僕は思います。彼は童話や詩を書くことによって、自分自身を表現し続け、自分の道を突き進んだのです。

以前僕は、「グスコーブドリの伝記」という物語を、何度も読んだことがあります。この物語を書くまでの賢治の人生には、様々なことがありました。農業の学問を身につけ、農学校の教師になったものの、わずか4年で退職しています。その間には、最愛の妹トシの死があり、とても悲しい時でした。それも乗り越えて、彼は、農民のために一生懸命働き、農業の指導をするかたわら、熱心にその勉強もしていました。しかし、あまりうまくいかず、賢治は挫折というものを感じていたのです。そんな中、仕事への無理がたたり彼は倒れてしまいました。こんな時、賢治はどう思ったでしょうか。挫折をしてしまう自分を責めたり、今までの仕事は意味がなかったなどと後悔したでしょうか。いや、賢治は違います。これから先へと目を向け、いくら病気であっても自分のしたいことを早くやりたかったのです。それは、この時期に書かれた「グスコーブドリの伝記」を読むことによってわかるように思います。

この物語に出てくるグスコーブドリは、飢饉で父母を失い、妹も誰かにさらわれていってしまった孤独な人間です。しかし周囲の人々に支えられ、彼は科学者になることができました。そんな時、また飢饉が起こる危険性があったので、火山を爆発させて気温を上げなければなりませんでした。彼は、多くの人々を救うために、自ら犠牲になることを志願したのです。

これこそが、賢治の追い求めていた人物像ではないでしょうか。グスコーブドリには、彼が最後までやり通すことのできなかった、農業の研究への理想もこめられています。グスコーブドリは、とてもよい肥料を作って畑にまき、農民を喜ばせました。賢治の心にはグスコーブドリのように人によいことをしたい、という強い思いがあったと思います。彼は病気の体でそれを表現できない代わりに、文章で自分の思いを表現したのでしょう。賢治は自分の理想とグスコーブドリを結びつけ、彼を目標にしてがんばって行こうという希望を、この作品に託していたのだ、と僕は感じます。

賢治はその後、自分の思いが達成できないまま37歳の若さで亡くなりました。彼の人生は、他の人とは違い、新しいことに挑戦し続けた人生だったと思います。そして、夢をいつまでも追い続けた人生だったと思います。賢治の故郷、岩手に僕は小学校の頃、旅行したことがありますが、今思うとそれらのことが体で感じられたような気がします。

宮沢賢治記念館には、ものすごい早さで書かれたと思われる原稿があり、たくさんの推敲の跡も見られました。夢を目指して頑張っている賢治の姿が思い浮かぶようでした。そして今、どこまでも耕された豊かな田畑は、賢治が理想とした「イーハトーブ」に近づきつつあるのでしょうか。

賢治は、「グスコーブドリの伝記」の中では、自分の理想を追求しているし、「銀河鉄道の夜」では、本当の幸せとは何か、と僕に訴えかけているような気がします。本当の幸せとは、僕にもはっきりとは分かりませんが、人のために精一杯よいことをするという心のことではないかとおもいます。それは「グスコーブドリの伝記」においても共通しているし、彼自身の人生においても共通しています。病床で書かれた、「雨ニモマケズ」の詩に見られるように、彼は人にデクノボーと呼ばれても、人のために尽くすという信念をもっていました。過労がたたって病気になり自分の命が危ないという時でも、彼は農民のために肥料の相談にのってあげていました。僕には、賢治のように身を尽くしてまで人の幸せのために働くことはできそうにもありません。でも、これから賢治に近づけるように、人のことをよく考え、人に優しく接していけるようになりたいです。みんなが人のことを考えられるようになれば、賢治の理想とした本当の幸せが訪れるのではないか、と僕は思います。

僕はこれから高校受験を迎えます。志望校は自分自身で強く心にきめました。どんな挫折や困難があっても、周りが何を言おうとも、賢治のように自分が決めた道を突き進んでいくつもりです。そして、いつまでも夢や幸せを追い続ける人間に、僕はなりたいです。

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