第五回島清ジュニア文芸賞「散文賞」(中学生の部)「希望の扉」その3

ページ番号1002738  更新日 2022年2月15日

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美川中学校三年 福村美緒

三人はミルディアンズの監督に会いに行った。試合後のロッカールームにはまだ熱気が残っていた。そこに監督だけが残っていた。
「すいません。」

ユウキが思い切って話しかけた。
「ん?どうしたんだい。」
「あの俺、片瀬ユウキといいます。今日の試合を観て、車いすバスケをやりたくなったんです。選手が車いすだということも、ものともせず必死で一つのボールを追いかけている姿に感動したんです。俺、二年前に自分の不注意で事故にあって、下半身不随になったんです。足が動かないと聞かされたときはかなり落ち込みました。けど今は、家族や友達のおかげで立ち直
れて、今の試合を観て、車いすの俺でも出来ることがあるじゃないかと思ったんでこうやって直に頼みにきました。お願いします、俺をミルディアンズに入れて下さい。」

監督は熱心にユウキの話しを聞いていた。そしてユウキにこう応えた。
「ユウキ君っていったね。」
「はい。」
「本気でやれるかね?」
「はい。俺、どんな厳しい練習にも耐えて絶対に一番になります。」
「そうか、じゃあ君の入部を許可するよ。その強い気持ちをずっと持っていれば必ず夢は叶う。厳しいけど頑張ってついてこいよ。」
「はい!」
「そうだね、とりあえず練習日時は火、木、日曜日の午後六時から九時まで。場所は青山学院高校って所の体育館。今度の火曜日は休みにしたから、木曜に親と一緒に来なさい。あっそうそう俺の名前は中井。よろしくな。」
「はい、よろしくお願いします。失礼しました。さようなら。」
「おう、頑張れよ。」
「ヨッシャー。尋、梨緒、俺ミルデイアンズに入れたぞ。」
「そうか、やったな。試合出るときは言えよ。絶対観に行くからな。」
「おう、期待して待ってろ。」
「ユウキ、応援してるからね。」
「梨緒も観に来てくれよな。」

外にはユウキの父が車で迎えに来てくれていた。まだ九月だというのに真っ暗だった。
「ユウキ迎えに来たぞ。暗いし危ないしな。尋君と梨緒ちゃんも乗っていきな。」
「ありがとうございます。」

車内は車いすバスケの話題で盛り上がっていた。
「ユウキ、どうだった?」

父がユウキに聞いた。
「うん、すごかった。圧倒されたよ。ねぇお父さん、俺、今日車いすバスケの試合を観て決めたんだ。車いすバスケ始める。」
「えっユウキがか…。」

父は少し考えた。父も以前のユウキの考えと同じだったからだ。
「ユウキ。お前自分でやるって言ったことなんだから、最後までやり通せるよな?」
「もちろんだよ。」
「帰ったらお母さんにもちゃんと言えよ。」
「うん。ありがとう。」

話しているうちに家に到着した。
「じゃあなユウキ。学校にも来いよな。」
「おう。」
「ユウキ車いすバスケ頑張ってね。」
「梨緒も勉強頑張れよ。」

ユウキが家に帰るなり中から「おかえり」という声がとんできた。
「ただいま。」
「ご飯だから、すぐ手を洗ってらっしゃい。」
「うん。」

ユウキは車いすバスケに期待を膨らませていた。
「今日はユウキの大好きなカレーよ。それじゃあみんな揃ったことだし、いただきます。」
「やっぱりお母さんの作ったカレー旨いよ。」
「あら、ありがと。」
「ところでお母さん。」
「何よそんなかしこまっちゃって。」
「実は俺、今日の試合観て、やっとやりたいこと見つけたんだ。お母さん、車いすバスケ始めたいんだ。もう俺、チームの監督に入れて下さいって頼んでOKもらったんだ。今度の木曜日に親と来て下さいって言われて一緒に来てくれないかな?」
「なんで相談してくれなかったの?ダメって言ったらどうするっもりなの?」
「それは…。」
「もう、けどいいわよ。これを機会に何事にも挑戦してみなさい。」
「うん、ありがとう。じゃあ今度の木曜に一緒に来て。浜松町の青山学院高校の体育館だから。」
「あら、バスですぐじゃない。移動は楽ね。」
「うん。六時から始まるから五時二十二分のバスに乗って行こう。それまでに帰ってきてよ。俺疲れたからもう寝るわ。おやすみ。」
「わかったわ、おやすみ。」

ユウキが寝た後両親はまだ話していた。
「あんなにユウキが積極的になるなんて。良かったわ。一時はどうしょうかと本気で悩んだわ。」
「俺もだよ。事故にさえあわなければ、ユウキの将来は希望に満ち溢れていたのに…そう思ったことが何回もあったよ。けど今はこうして車いすバスケに出会ってユウキのあんなにイキイキとした顔久しぶりに見た。俺達はユウキを見守ることしか出来ないけど、応援してやろうな。」
「そうだね。せっかくユウキがやりたいこと見つけたんだから、それを否定することなんて出来ないわ。」
「遅いからもう寝るか。」
「あらもう十二時過ぎてる。寝ないと明日起きられないわ。」
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」

二人にも以前の明るさが戻っていた。

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