第二回島清ジュニア文芸賞「散文賞」(小学生の部)「天使の子守唄」その2

ページ番号1002755  更新日 2022年2月15日

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美川小学校6年 北川春実

———ここはおとぎの世界。回りにはたくさんの木があります。綿菓子みたいな実がなっている木。お菓子がなっている木。まわりにはお菓子の家があり、上には青い鳥や妖精が飛び回っています。こうなると、李花は約束なんか忘れて遊び回っているのではないかと心配になってきます。でも、大丈夫でした。李花は約束を忘れてはいません。青い鳥や妖精たちに、
「森で一番大きなりんごの木を探しているんだけど、どこにあるのか知ってる?」

そのたびに妖精や青い鳥は、
「知らなぁい。」
「小人に聞くといいわよ。」
と言うのです。李花は小人を探す事にしました。すると森の奥から元気な声が聞こえてきました。
「ハイホー、ハイホー♪」
見ると、李花の足首までしかない小人が、七人きちんと並んでやってきました。
「ハイホー、ハイホー♪」
「小人さあーん!!まって、まって。」
 小人たちは李花の方をふりむきました。
「あのね、森で一番大きなりんごの木を探しているんだけど、どこにあるのか知ってる?」
すると、前から3番目の小人が言いました。
「ああ、長老さまの所へ行くのかい。」
「うん、そう。」

すると、今度は先頭に立っている小人が言いました。
「じゃあ、案内してやろう。なにしろ、長老の家までの道は、ややこしくて入りくんでやがるんだ。」

李花は小人の後を歩いていましたが、なるほど、呪文や合言葉を言わないと開かない岩や、たくさんの穴があり、本物の穴の特ちょうを覚えていないと落とし穴に落ちてしまう所や、きのこがたくさんはえていて、その中で正しいきのこを食べないと通してくれない道など、小人がいないと通れなかった所ばかりでした。最後の、わかれ道に立っているシンデレラのまま母やお姉さんをほめちぎらないと正しい道を教えてくれないわかれ道を通っている時、李花は小人に聞きました。
「ねぇ、どうして毎回ほめちぎってまで道を教えてもらうの。正しい道を覚えておけばいいじゃない。」
「そうできりゃ、そうするさ。しかしなぁ、長老さまはいろいろな薬草などを持っとる。それをねらって、いろいろな悪人が長老さまの所へ来るんだ。それを防ぐために長老さまが頭をひねって考えたのが、ここまでの道さ。」
「なるほど、だからあんなにややこしい所があったのね。」
「そういう事さ。そら、ついた。」

見れば、本当に大きなりんごの木です。りんごの実が、赤くなり始めています。根本には小さなドアがあり、”小人長老の家”と書かれたプレートがかかっています。下で、小人たちがドアをトントンとたたき、
「長老さまー、お客さんですよう。」
と呼びました。すると、ギギギー、とドアが開き、白ひげをはやしてつえをついた小人の長老が出てきました。長老はゆっくり李花を見上げると、
「お客さんとは、あんたの事かね。」
と聞きました。李花はおそるおそる、
「はい、そうです。」
と答えました。長老は、李花をゆっくりながめ回すと、今度は、
「わしに何の用かね。」
とたずねました。李花は、あの、と言いかけましたが、
それよりも先に、先頭に立っていた小人が、
「はい、それがですね、なになに、悪魔をやっつけたいので、雪をわけてほしい、との事ですが。」

李花は、びっくりして小人を見つめました。李花は、小人にこの話をしていないのです。

すると、長老が、
「わしら小人は、人の考えを読む事ができるのじゃよ。・・・悪魔退治か・・・。よかろう、入るが良い。あ、お前たちは帰って仕事をしなさい。」

小人たちは、また一列に並んで、ハイホー、ハイホー、と帰って行きました。

小人たちの姿が見えなくなると、長老は、
「ほれ、入りなされ。・・・あ、そのままでは入れんか。」

そう言うと、家の中から小さなびんを取って来て、李花に手わたしました。
「・・・なあに、これ。」
「小さくなる薬じゃよ。飲みなさい。」
「え、でも・・・、ちゃんと元にもどれるんでしょうね。もどれないのはいやよ。」
「大丈夫、心配いらん。」
「それなら飲む。」

ごっくん、李花はその薬を飲みほしました。

すると、みるみる体が縮んでいき、長老と同じくらいになりました。
「これで良し。入るぞ。」

長老はドアを開けて入って行き、李花もその後に続きました。
「うわ・・・あ」

回りにあるのは戸だなばかりで、その戸だなの中には、たくさんのびんや分厚い本、机の上にも本が開いてあり、かまの中では緑色の液体がぶくぶくと音をたてて煮えたぎっています。その横で長老は
「これでもない、これでもない・・・。」
と雪の入ったびんを探しています。時々かまの中の液体が”プシューッ”と音をたて、その度に李花はびっくりして声をあげます。

しばらくして、
「あった、あった。おうい李花、雪が見つかったぞう。」
と長老は李花を呼びました。それまで本を読んでいた李花は、
「えっ、あったのっ。」
と急いで長老の所へ走り、危うくつまづきそうになりました。
「ほれ、これじゃ。」

雪の結晶の形のラベルをはったびんの中に、これ以上ないほど真っ白な雪がいっぱいに入っています。それはちょうど、天使の羽根と同じ色でした。
「わぁ、きれい・・・。ありがとう、長老さん。」
「礼はいい。何しろ悪魔の奴には手を焼くからのう。それより、早く行ってやった方がいいぞ。」
「あっ、そうだ。早く帰らなくっちゃ。あ、でもどうやって帰るのかわかんない・・・。」
「おいで。」

長老が手まねきしました。
「あっ、お庭だ。」

長老の庭には、ハーブや薬草がたくさん植えてあります。でも、すみにはエンジェルトランペットが、真ん中には杏の木が植えてありました。そして、その杏の木の下にぽっかりと丸い穴が・・・。そう、現実の世界への入り口です。長老が、
「むこうへ着いたらこれを飲みなさい。元通りになる薬だよ。」
「ありがとう、長老さん。」
「ああ、またおいで。」

李花は入り口へ入って行きました。右手に雪のびんを、左手には元通りの薬のびんをしっかりにぎって・・・。
———気がつくと、李花は家の庭に立っていました。おとぎの世界ですごした時間はすごく長く感じたのに、薬を飲んで元にもどった李花の姿を見ると、天使たちはびっくりして口ぐちに言いました。
「あ、あれぇ李花ちゃん・・・さっき行ったばっかりなのにもうもどってきたの・・・?」
「忘れ物でも、したの・・・?」
「早くしないと、入り口閉まっちゃうよ・・・?」

李花はきょとんとして、
「な、何言ってるの、みんな。雪はちゃあんともらってきたよ。」
そう言って、李花は長老にもらった雪のびんを見せました。
「本当だ・・・。」
「雪、入ってる・・・。」
「さわってみてもいい?・・・うわあ、冷たあい。」

天使たちはそう言って、しばらくは雪のとりこになっていましたが、やがて、
「あっ、これは悪魔にかけなくちゃ。」
「そうだっだ。」
「忘れてた。」
「李花ちゃん、はい。」
と、李花に手わたしました。
「ありがとう。・・・いくよっ。」

天使たちはうなずくと、ごくりとつばを飲みこみ、視線をじっと李花に注ぎました。
「えいっ。」

李花はおそるおそる、一匹の悪魔に雪をかけてみました。すると悪魔は
「ギャアアアアアアア———ッ」
と悲鳴をあげ、溶けてしまいました。李花は、しばらく呆然としていましたが、2匹目、又3匹目と雪をかけて、とうとう全ての悪魔を溶かしてしまいました。そして、小さなつぽに入った露をつかんで、天使たちの所へ走りました。すると、天使たちは声をそろえて、
「わぁ、李花ちゃんありがとう。」
と言うと、3人で仲良く飲み始めました。

つぼの中身がからっぽになるころ、天使たちはすっかり元気になって、またトランペットを吹き始めました。———天使の子守唄を・・・。

夏の終わりに、天使たちは、天界へ帰って行きました。
「さようなら、李花ちゃん。」
「これ、おみやげだよ。」

セフィはそう言って、天使の羽を一本、李花にわたしました。
「うわあ、ありがとう。これ、李花の宝物にしようっと。」
「うん。さようなら。」

李花は、ちょっぴり涙が出そうになったけれど、天使の羽を見ると、涙なんてひっこんでしまいました。

天使とはお別れしたけれど、李花はそれから毎年おとぎの世界へ行きました。長老の家の庭のエンジェル
トランペットの所で天使たちを見つけた時は、涙が出るほどうれしかったのだそうです。

しかし、李花もおとぎの世界を卒業する日が来ました。その日は、李花の10才の誕生日でした。いつもの
ように入り□に入り、おとぎの世界へ行ったのはいいのですが、なんだかみんな、様子が変です。みんな、いそいそと妖精広場の方へ向かっています。そこへ、七人の小人が通りかかりました。小人たちは李花を見つけると、
「おう、李花!久しぶりだな。元気にしてたか!」
「小人さん。お久しぶりねえっ。」
「今からパーティーだぞ。おいで。」
「うん、行く行くっ。なんのパーティー?」
「送げい会だよ。」
「ソウゲイカイ・・・?誰をソウゲイするの。」
「おまえさんさ。」
「えっ、李花をソウゲイするの。どうして?」
「おまえさん、今日で10才になっただろう。ここは子供しか来る事ができんのだ。ここでの子供とは、10才ま
でだ。」
「そんなぁ、いやだよう。子供は20才までだよう。そんなのおかしいよう。」

すると小人はにっこりして、
「大丈夫、この世界に現実でこれなくなるというだけで、夢でなら何回でも来れる。」
「そっか。・・・でもちょっとさみしいな。」
「ははは、そうかもな。」

妖精広場に着きました。”李花ちゃん送げいパーティー”の文字が空中に浮かんでいて、テーブルの上には、白雪姫さん自まんのアップルパイ、人魚姫さんのシーフードスパゲティーにシーフードサラダ、お料理上手なシンデレラはハンバーグやビーフシチュー。妖精たちは、木の実でジュースを作っています。綿菓子の実のジュース、りんごのジュー-ス、エンジェルトランペットの露もあります。

李化を見つけると、シンデレラは、
「いらソっしゃい、李花ちゃん。今日はあなたのためのパーティーよ。ゆっくり楽しんでいってちょうだいね。」
と言いました。李花は、
「うん、ありがとうっ。」
とお礼を言いました。さみしい事など、もう忘れてしまっていました。
「かんぱーい!!」

カン、カンとグラスがぶっかり合い、みんなごちそうを食べ始めました。

李花はまずシーフードスパゲティーを食べ、ハンバーグを二切れかじってからアップルパイを一切れ食べました。
「おいしいっ。みんなお料理が上手ねえ。」

すると、長老が、コホンと一つせきばらいをして、
「あー、ここで今回の主役、咲原(さきばら)李花さんに見てもらいたい物がある。」

李花はびっくりしてエンジェルトランペットの露のグラスから口をはなしました。

長老が指をパチンとならすと、天使たちがワゴンを押して来ました。その上に大きなケーキがのっています。生クリームやチョコレート細工のばらなどでかわいくデコレーションされたケーキの一番てっぺんに、”李花ちゃんお誕生日おめでとう”と書かれたプレートが、ちょこんとのっかっています。
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
と、クラッカーをみんなでならしてくれました。李花は、
「うわあ、ありがとう。李花の誕生日、覚えていてくれたの。」
とお礼を言いまいた。

楽しい時間はすぐに過ぎてしまうものです。やがて、お別れの時問がやってきました。
「さようなら。みんなの事、忘れないよ。」

李花が言うと、長老は、
「ほっほっほ、そんなさみしい事言うんでない。夢でまた何回でも会えるじゃろうが。」
と笑いながら言いました。
「さようならーっ、じゃなかった、まったねーっ。」

気がつくと、李花は、庭にいました。

エンジェルトランペットは、露にぬれて光っていました。天使たちはここで遊んでいたんだなー、と思うと、自然に笑みがこぼれてきます。優しい子守唄が、聞こえてくるようでした。———李花は部屋の中に入りました。ふと時計を見ると、おとぎの世界へ行ってから、まだ10分しかたっていません。李花は、ベッドの中へ入りました。そして、ねむりました。夢の中で行ったおとぎの国は、とても楽しいものでした。

毎日、李花は夢の中でおとぎの国へ行きました。しかし、朝になると、どんな夢だったのか、すっかり忘れてしまっています。——ただ、とても楽しい夢だった気がするのです。

時々、李花は思います。あの、おとぎの世界で過ごした時間は、すべて夢だったのではないかと——。

だけど、机の上の雪が入ったびんと、天使がくれた羽を見るたびに、あれは現実だったんだ、と確信するのです。
「私は、確かに長老に雪をもらって、悪魔を退治したわ。私は確かに天使たちと遊んだわ———。」

みなさんも、子守唄を聞いた事があるのではないでしょうか。———もう忘れてしまった、天使の子守唄を・・・。

耳をすませば、聞こえてくるのではないでしょうか・・・?

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