第七回島清ジュニア文芸賞「散文賞」(小学生の部)「世界一小さな物語」
松陽小学校6年 木村 陽太
第1章 変化
「おやすみなさい。」
今、夜の9時半。部屋のベッドで横たわっている。そして、眼を閉じ、眠りこけた。これから自分の身に何が起こるかも知らずに・・
第2章 決意
『コケコッコー』
ううー、と、うめいて寝ぼけ眼の目をこすって、よっこらせと体を起こしたその時に。ア、アリになっている。このおれがありえない!きっと夢でもみているのだろうと眼をこするとやはりアリのすがた。どうしよう、少し泣きたくなった。しかし、決意した。よく考えてみれば、めんどくさい学校もやめたくなってきた。どうせならと2階の窓から、飛び降りた。
第3章 落下
シュゴーーーー
空気の流れが、聞こえる。だいたいなんでアリになっちまったんだろうか?とぼうっと考えた。
ドサッ
「イテ・・・イテテテテ。」
あまりの痛さにあるくことすらやっと。全くだ。そう思った直後、おれは気絶した。
第4章 拾われた子
ここはどこだ温かいベッドの上にいた。見ると僕と同じアリがいた。
「ANT、どこほっつきやがってんだ。心配したんだぞ。」
おれはANTとよばれ、びっくりした。
「ここはどこだい。」
「何でお前が知らないんだよ。え、記憶喪失?なら教えてやる。」
言い訳で自分が記憶喪失だということにしておいた。
「ここは、一族の巣だ。何代も続いているのだぞ。それともう1つ、おまえは、ここにいていいことになった。」
それは、驚き、桃の木、山椒の木。そして、体を起こしてみると、やはり、ズキズキ痛む。なので、今日は寝ることにした。
第5章 働きアリ
ZZZ・・・・
「おい、起きろ。」と声がする。真っ暗だ。まだ丑三つ時ぐらいの時間だろう。
「おい、ANT、おまえに仕事の説明をする。ここでは色々な仕事を役割分担してやる。例を挙げれば、狩りや掃除や餌探し。まあ、そんなとこだな。」こんなに長いこと話されたもんだから、頭がパニックになりそうだ。
「あんたの名前は?」おれが聞く。
「ZACだ。分かったか。」
「さあて、さっさと仕事するぞ。おまえは狩りの役だ。」
「おれのほかの人は?」
「IRA、WOD、おれ、お前だ。」ZACが言う。
ハア。なんなら、学校の方がましだ。
第6章 仕事
みんなもそろったので、外に出た。まったく、4月だからといっても、まだ寒い。
「さーて、新入りに詳しい説明だ。ここは死んでいる生き物たちを巣まで持ってゆくのだ。分かったか?」
「へえ、その割には人数が少ないね。もしかすると・・要らない役?」
「違うのよ。狩り役は、いっぱいあるのよ。ここはK地点だよ。26個の地点があるんだ。」IRAが言う。フム、どうやらIRAの性別は女らしい。
「さあて、出発するぞ。」ZACが仕切る。どうやら、やつが班長みたいなものか。ずっとずうっと歩いた。IRAとZACはおしゃべりしてる。おれが馴染めないのは、当たり前だとしても、なぜWODはしゃべらないのだろう。それにしてもこの道はなんだ。まったく、獣道よりも悪い。
「よーし、早速、バッタがいるぞ。もっていくぞ。」こりゃ、まるで化け物だと思った。こりゃ重たい。みんなで持っても、ほんの少しも運べないだろう。
「しかたがない、このバッタを切るぞ。」
「えっ、このバッタをきるってえ!」おれは驚いた。はさみも持ってないのに、どうやって切るのだろうか。
「おまえの口にもはさみあるじゃん」めんどくさそうに答える。どうやら、当たり前らしい。もう太陽が一番高いところ、つまり、ちょうど昼の12時。ようやくひとりで持ち運びができる大きさに切り分けた時には、もう日が暮れていた。昨日の痛みと筋肉痛で痛い。
「おい、運ぶぞ。」ZACが言う。仕方なく運び始めた。2時間ぐらいはたっただろうか。
ようやく巣に戻った。
「初仕事はどうだい?」WODが聞いてきた。
話が変わるが、おれは、人間の頃、転校して、この辺に来た。ある人が、おれのところに寄って来た。それはそれはしつこかった。その後、おれが聞いた話だが、その寄って来たやつは友達がいなかったそうだ。いまのやつが、その寄って来たやつと同じなんだなあ。ZACやIRAもかまってやりゃあいいのに。少しかわいそうになった。なるほど、だからわざわざおれに『初仕事はどうだった?』ってきいたのかあ。
「こんな最悪な日は初めてだよ。」俺は答えた。答えて間もなく、おれはねむった。
第7章 夏のある日
それから3ヶ月ほど過ぎ、IRA、ZAC、WODと友達になった。(ちなみによくIRAが夜、散歩にいっているらしい。どうしてなんだろうか)そして、大広間や食堂の場所も覚えた。もう7月の上の方。日曜は休みなので、6時半ごろに起きると、いきなり、
「ギャーーーー」IRA、WOD、ZACがさけぶ。
「鳥だ!」誰かが言う。よく見ると、スズメだった。こりゃあ、怪物だ、と思った。おれたちが普通の人間の大きさだとすると、〔6mm〕スズメは、〔7cm〕ゆうに、10mはある。おれは逃げた。みんなもそうしただろう。そして、ようやくスズメの腹の虫が鳴らなくなったのか、飛び去っていった。しかし、ものすごい被害だ。全体の5%は、スズメの腹の中。全体の90%は怪我を負い、その中の30%は助からないだろう。無事なのは、おれ、ZAC,IRA,WOD,その他の数百名のみだ。
ただ幸いにも長老は、死なずにすんだ。(おれをここに置いてもいいと判決したのはこの人だ。)
第8章 長老の話
長老の話は、虎か龍を思わせる声だ。
「諸君、この者達を助けるには、黄金のハチミツが必要だ。しかし、それを手に入れるためには、過酷な冒険をしなければならない。誰か行くものはおらぬか?」
「おれが行く。」ここに居座っていただけの恩はしたいものだ。
「ANTが行くなら私も。」
「・・・・・おれも。」と、WODが言う。
「俺も行ってやる。」ZACも言ってくれた。おれは少し心配になった。しかし、言ってしまったことは変えられない。そして長老が、
「明日の夜明けに出発じゃ!」
第9章 いざ出発
おれは寝ようとした。しかし、寝れなかった。おれはこんなところで死ぬのか?こんなアリの状態で。たぶん他のみんなも寝付けないだろう。おれは明日の冒険の準備をした。〔道具在庫から勝手に道具を出していいといわれた。〕フム、結構そろっているものだな。食べ物、あまり切れないがナイフ、〔びっくりしたことにこれはガラスだった。〕植物のつる、きのぼう、石、地図もだ。地図には、ちゃんと東西南北がのっていた。地図で見ると目的地は西だ!しばらく漁っていたら、もう夜が明けてる。急いで走った。
「やあ、息ぴったりだねえ。」ZACが言った。さあ、出発だ。
・・・・・もう何時間歩いただろうか。もう昼間だ。しかし、まだ巣が見える程度だ。やはりアリだもんな。つくづく思いながら食事をした。
その時、後ろから・・・・
第10章 背後から
後ろを振り向いた。バッタだった。やはり山のようだ。そして、バッタが、
「ここはわしのなわばりだぞ。」
カッとなり、ZACが、
「何だと!通るぐらいいいじゃないか。」
「ここで気持ち良く寝ていたのにおまえらが通ったせいで。」怒りで言葉を切る。またバッタが、
「フム。では、この問題が解けたら、許すとしよう。そして、ほうびをやろう。」バッタが歌いだした。
『だれでも初めに持っていて、まだまだ途中に持っていて、なんだの最後はなあんだ?お次は何でも伸ばす音。地図の間に入ったら、地図がチーズになっちゃった。さいごに数字を見てみよう。三×三はなあんだ?出てきた言葉をつなげてみよう。そしたら答えが見えてくる』
これは何だろう?最初に思った言葉だ。三×三は『く』だ。初めにだれでも持っているか。
ウーン。あっ、そうか。いいかたをかえればいいのか!『だ』れでも初めに持っていて、ま『だ』ま『だ』途中に持っていて、なん『だ』の最後はなあんだ。なるほど!『だ』をみんな持っているんだ。これだけじゃまだ分からないぞ。でもこれだけだと、だ、と、くになっちゃう。急いで、真ん中の言葉を見つけなければ!地図の間にある言葉を入れたら、地図になるんだよなあ。
「残り10秒じゃぞ」
10、9、8、7・・・
そして頭の中にある考えが浮かんだ。地図の間に、ーを入れれば、チーズになる。これで、3つの言葉が分かったぞ。
これをつなげれば・・。
6、5、4、3、2、1・・・
「わかったぞ!」
「では、答えは?」
「答えはか・・・。答えは『ダーク』だ」大声を張り上げる。
「正解だ。」バッタが言う。
「先を急げ。そしてほうびとしてこれをやる。どうせ、寝るほど暇じゃったしな」
「あんた・・・・だましたわけね」IRAが頭から湯気が出るほど怒った。
「ホッホッホ、そうじゃった、ほれ、宝じゃよ」
「これは?」ZACが受け取り、そういった。
(何で僕が問題に正解したのにZACにわたすんだ!)
「これは知能の石というものじゃ。後々、必ず役に立つじゃろう」
その時には、その場にZACとバッタ以外はいなかった。息する間も無く、ZACとバッタの悲鳴が聞こえ、2人は死んだ。
第11章 初めての対決
「フム、こいつはなかなか美味い。念願のこの石も手に入ったし、まあ、このアリはデザートとしてとっとくがな」カマキリが言う。
「おまえは?」途方にくれたようにWODが言った。
「おれか。おれこそが、あの問題の答え、ダークだ。いつかあのバッタのジジイを食おうとしてたからな。まったくあんな問題作りやがって」高笑いしながら言った。
「ここ十日、何も食っちゃいないからな。さて、おまえらも食うとするか」いきなりビュッとカマが飛んできた。よろめきながら何とかかわす。おれが石を投げる。ひょいとかわされる。WODがカマを枝で、止めようとした。ガガガガ、と枝が削れる音が聞こえた。おそらく、いや、虫にそんな脳があるのか、弱っていたWODを殺そうとしたのだろう。
「危ない!」2人で金切り声を上げたが遅かった。WODはまちがいなく、息の根を止められている。そう、WODは死んだのだった。
IRAと僕は怒った。IRAは、ものすごい剣幕で、木の枝を投げつけていた。僕は、ナイフを、思いっきり力をこめて、投げた。そうしたら、スパッと言う音とともに、見事にダークの首が切れた。
第12章 勝利の悲しみ
仲間が死んで行く。そんなとき、どうする。逃げるか?立ち向かうか?僕たちは逃げなかった。そして勝ったのだ。しかしあのやみくもな一撃で、ナイフがどこかにすっ飛んでしまった。そんなわけで、戦利品を集めた。ダークのカマ、(すごい切れ味が良さそうだ)さっき、取られかけた知能の石、それと食べ物、(これは、ダークの足だ。あんなやつの足だと分かっていても、一口食べれば分かるはずだ)そして、もう一つ、光るものを見つけた。
「これは何だろう」
IRAが聞いてきた。
「たぶん、知能の石の一種だな。あの木の枝は、硬かったのに、一撃で折るんだから」
血の気がさぁと引いてゆく。あのWODの無残な死を思い出してしまった。ぞうっとする。
「今日は寝よ」
今日の出来事は、一生忘れられないだろう。
第13章 夢
・・・・僕が倒れている。誰かが高笑いしている。耳をつんざくような声で・・
冷や汗が出るような声だった。言いようの無い恐怖にうなされていた。
第14章 悪
目が覚めた。汗でビショビショだ。
「どうしたの」IRAがやさしい声で言った。夢の話をしたら、
「フーン」で受け流されてしまった。
「まあ、正夢かもしれないし・・・」少し考え込んだみたいだ。
「ギャッ!」
セミが目にもとまらぬスピードで、ビュッと、
IRAをわしづかみにして、さらっていった。セミは何メートルか先の木の穴に入った。IRAが危ない!IRAを助けに行かなければ!ようやく木の穴に入ったら、IRAはつたできつくぐるぐる巻きにされていた。その前に、セミが立っている。どうやら、セミと戦わなければならないらしい。カマキリのカマで、シュッと、すばやく切りかかった。しかし、ヒョイとかわされた。どうやら、ものすごいスピードが出せるらしい。やみくもに、ブンブンふりまわしたら、シュッとセミが切れた。
しかし、かすり傷だった。カマを、長いこと、振り回していたので、息が切れた。今、攻められたら、大怪我を負うだろう。しかし、なぜか、セミは弱ってきた。けいれん(の様なもの)を起こし、数秒後、倒れた。なんで、倒れたのだろう、と考えた。毒でも塗ってあったのかなあ。IRAが、グルグル巻きにされている蔓を噛み切り、IRAを、助けた。どうやら、無事なようだった。
「IRA!」と叫んだ。しかし、気がついた。IRAは、セミに、爪を立てられ、乱暴でもされたに違いない。それに、なにか、いつもと様子が違う。
「お前は偽者だ!」
「ほう、よく分かったなあ、これは、あいつの皮だ。どうしてだからだ」
「セミにあんなにされたんだから、死んだと思った」
「ほうほう、よく分かったなあ。本物は、とっくのとうに死んでるよ。あの部屋でね」
「ここの名前は無限の間だ。どこかに、黄金のハチミツがある。一番の近道は、あいつが死んでいる部屋を通るのが一番早いのだがな。それを耐えられるのかな?怖かったら別のドアを通れ」
「それでは、また合おう」IRAの死んだ物を見るのは、とても耐えられない。むごすぎる。
あんまりだ。と嘆く暇も無く、右のドアをギィと開けた。そしてまた、左、左、右、正面と通っていった。すると、血か何かで書かれた、かすれている赤色の字の看板を見つけた。
『このはし、わたるべからず』
おれは無視して、左のドアに手をかけた。しかし、あることに気がついた。最初に端の右か左にドアを開けたら、だめだったんだ。僕はドアノブから、手を離し、真ん中のドアノブに手をかけた。ギィと入ったら、たくさんのムカデやハサミムシやでかくなったら怪獣にでもなりそうな者もいた。そして奥にかんばんがあった。それには、こう書いてあった。『この橋渡るべからずとかいた
のう無し看板見てみたか?あの
まぬけのせいで君たちは、こ
んな所に来
なけりゃいけなくなったの
か?まよって来て見りゃこんなところ
を通らにゃ
い
けないけれど、この先、どこの戸通る?
頭を使って考えよう』
これは、人間だったころ、漫画で見たことがある。頭を使うを頭の文字を使うというふうに考えればいいのだ。答えは、『このまんなかをゆけ』だ。
敵だらけの道を走りぬけ、真ん中の戸を、バッと開けた。中にはあふれんばかりのハチミツ、ハチミツ。ハチミツだ!!
第15章 最後の敵
喜びもつかの間、IRAの皮をかぶった奴が現れた。
「おい、おまえ。なぜIRAをさらったんだ」
「なぜかというとね、昔、自由を求めて、巣を出て行こうとしたんだ。そうしたら、あいつらの親がおれを止めようとした。命からがら逃げ切ったのだが、あいつらの親が、長老におれのことを告げ口しやがった。IRAの母が特に、厳しく追ってきやがった。何度も何度も追ってきやがったんだ。親のほうを殺したが、石を使って、おれからIRAを守ったんだ。そのせいで、おれには、大きな傷ができた。だから、恨んでいたんだ。あの巣の一族を。」
「私の名前は、戦闘マシン、ZOAだ。ZACのCとWODのDとIRAのAから取ったのだ。いいなまえだろ。」しかし、名前などどうでも良くなった。
「もしかすると、鳥は、おまえがけしかけたのか?」
「ああ、そうだよ。一族を皆殺しにしようとしてね」
「そ、そんなことしたのか」
「ああ、遠くから見張っていたよ。楽しかったなぁ」その言葉に僕はすごくむかついた。
というより、怒った。不意打ちとしてかまをビュッとふったが、ゆうゆうかわされた。
「おやおや、私が戦闘マシンだったのを忘れたのか」と言った瞬間、ガスッと殴ってきた。もう一発、拳が飛んでくる。ガッガッガッハッ。頭がくらくらする。しかし、ZOAは殴ることを楽しんでいるようだ。そっちのほうに集中しているようだった。遠のく意識の中、カマをおもいきり、首めがけて振り下ろした。
ZOAの首をスパッと切り落とした!しかし、頭が割れるように痛く、息があがり、死にそうだ。ZOAの死体から、何かが浮かび上がってきた。知能の石ともう一つの石が浮かび上がった。そして、互いに反応しあい・・・
「何か一つだけ願いをかなえてやろう」声が言った。何というかは、決まっていた。
「黄金のハ・・・ハチミツ・・を巣・・・に」
「分かった」指を鳴らすような音がした。もう、僕はとても弱っていた。このまま死ぬのだろうか。動けない。死んでいった仲間が、笑っている。ZAC、WOD、IRA、鳥に食べられた仲間が笑っている。みんながみんなで、混ざり合い・・・・・
ウウウと僕はうめいた。そして、上のほうに飛び上がっていった。上へ上へ、そして、僕は死んだ。
第16章 その後・・・
その後、黄金のハチミツは、襲った鳥よりも大きいビンに詰められた。そして、ANTは、永遠に一族の中で勇者と語り継がれました。そして、もう反乱する者はいなくなり、一族は、繁栄しました。
End・・・
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