第三回島清ジュニア文芸賞「散文賞」(中学生の部)「夢 永遠のつくり方」その1

ページ番号1002751  更新日 2022年2月15日

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美川中学校3年 中村 希

夏休みに入ったばかりのある日、旅行中の夫婦が交通事故で亡くなりました。その日はその夫婦の結婚記念日だったらしく、娘に温泉旅行をプレゼントされて行ったとのこと。その夫婦の娘は一人っ子でした。そのこの名前は雛瀬愛美(ひなせまなみ)、17歳。
「一人ぼっちになっちゃった・・・。」
あまりに突然の出来事だったので混乱を隠せない愛美。祖父や祖母もすでに他界しており、頼れるのはイトコである星月優梨(ほしづきゆり)の家だけであった。優梨とは同じ年で仲もいいので、同居することをすんなりOKしてくれたのであった。そして・・・
「愛美っ久しぶりー。」
優梨はとても明るく愛美を迎えてくれた。
「優梨ちゃん!わぁー何ヶ月ぶりだろー。」
居場所ができた愛美は心から喜んだ。優梨の父と母も歓迎してくれた。優梨もまた一人っ子だった。
「あっお、お世話になりますっ。」
照れながら挨拶をした。優梨の母はにっこり笑っていらっしゃいと言ってくれた。ここは何の問題もなく過ごせる環境だと愛美は思った。そして空を見上げ大きく深呼吸した。
「お父さん、お母さん、愛美はこの新しい環境でがんばりますっ。」
目を閉じ、大きな空に愛美はそう誓った。

数時間後、荷物もだいぶ片づいたころ、外の方からガタガタと物音が聞こえてきた。偶然にも、愛美と同じように引っ越して来た人がいるらしい。2人は2階の窓から覗いた。
「お隣りだね。何て人だろ?」
「さぁ、わかんない。あっ見て、私達と同じ年くらいの男がいるよ。」
その男は2人いた。ツンツンした髪の人と、サラサラした髪の人。その時、その2人が2階の窓から見ている愛美と優梨に気づいた。ツンツンした人はこっちに向かって、笑って手を振った。サラサラした人は目をそらした。クールな性格らしい。そしてダンボールを抱えて家に入っていった。天パの愛美は頬を赤らめて沈黙し、直毛の優梨は惘然としていた。
風が2人の髪をなびかせる。
「優梨ちゃん、なんか・・・赤い実が・・・。」
「赤い実?」
優梨は愛美の言葉を理解しきれなかった。小学のときの国語の教科書が違ったみたいだ。
「・・・愛美?」
高なる胸の鼓動に熱くなる体。色んな思いを心にのせながら、哀しく、切なく長い夏が始まった・・・。

蝉がうるさく鳴くある日、例の男2人とその両親が引っ越しの挨拶をしに来た。名前は「大塚(おおつか)」さんだそうだ。挨拶とおまけにツンツン頭の男の方が、この周辺の案内をしてほしいと愛美達に頼んだ。2人は心よく引き受け、さっそく外に出た。
「俺は直人(なおと)!こっちは勇希(ゆうき)、よろしくなっ。」
ツンツン頭の直人は明るく紹介した。サラサラ頭の勇希は相変わらずクールな表情。
「私は優梨。こっちは愛美だよ。」
こちらも白己紹介をした。
「ね、2人は兄弟?」
気になっていたことを優梨は聞いてみた。その時の愛美は直人の方ばかりを見ていた。
「んーん、違う。俺ら双子っ。」
そう言って直人は勇希と肩を組んだ。
「えぇっ!?」
2人は声をそろえて驚いた。なぜなら、2人の顔を見れば、
「似てない・・・よね?」
となるからだ。愛美も優梨も不思議がった。たしかに双子は普通似ているものだ。
「2卵生だから。」
勇希が初めて口を開いた。なるほど、と2人はうなずいた。・・・それにしても暑い日だ。1時間もすれば真っ黒に日焼けしそうなくらい暑い・・・。と、微妙に愛美の様子がおかしいのに直人が気づいた。愛美はとてもツラそうな顔をしている。—その時だ。愛美は足の力がなくなったのか、倒れそうになった。
「あぶねぇ・・・っ。」
が、そこを直人がしっかり愛美の体を支えた。
「愛美!?」
「だ、大丈夫か!?」
優梨と勇希も心配する。どうやら愛美は体が弱いらしい。正常な人でも溶けそうなくらい暑かったのだから、体の弱い愛美が倒れても無理はなかった。
「あつい・・・。」
愛美を抱え、3人は急いで家へ戻った。

7時を過ぎてもまだ明るく、蒸し暑かった。でも少しだけ風が吹いていた。すると優梨と愛美の部屋の窓にコツンと何かがあたる音がした。優梨はカーテンをめくり窓を開けた。
「なあ、愛美は大丈夫なのか?。」
直人だった。昼間のことが気になったらしい。
「心配してるのはわかるけど石なんてなげないでよねー。割れたら弁償してよねっ。」
「悪ぃ悪ぃ。そう怒んなって。で、もう大丈夫なのか?」
本当に心配そうな顔つきで聞いてくるもんだから、優梨もちゃんと真面目に答えた。
「うん、もう平気。もともと暑さに弱いんだよね。今はお風呂に入ってるよ。」
そういえば下の方から何やら鼻歌が聞こえてくる。
「何だ、スッカリ元気なんじゃん。」
と言って直人はホッとした。優梨は何やら笑顔で直人の方を見ていた。
「直人ー飯だぞー早くしねぇとお前の分も食っちまうぞ!!」
下の方から勇希の叫ぶ声がした。直人は、
「お、おいっ待てっふざけんな!!俺のまで食うな!!あ、じゃあな優梨、まった明日ー。」
そう言って慌てて階段を駆け下りていった。
「・・・何でまた明日?ま、いっか。」
「優梨ちゃーん、ご飯できたってー。」
愛美が呼んでいる。それを聞いた優梨もまた駆け下りて行った。今日はとても星のキレイな夜だった。明日もきっと晴れるだろう。

そして次の日。また部屋の窓に石があたる音がした。
「うー、何?窓に何かあたって・・・。」
眠い目をこすり愛美が窓を開けると・・・
ガッンッ!!
「あっ。」
やはり直人だった。そして投げた小石の1つがデコにヒットした。愛美はデコをおさえた。
「〜〜〜〜〜っ。」
「あ、悪ぃ・・・。」
とりあえず謝る直人。涙目で話す愛美。
「モー何なのー?朝っぱらから〜〜〜。」
そう言ってヒットした石を投げ返した。外を見ると、いい天気だった。
「海に行こうぜ!!」
ニカツと直人は言った。
「・・・へ?」
愛美はきょとんとした。そして、2人の話し声に気づ.き優梨も目を覚ました。するとバタンッと部屋のドアが開いた。
「あ?まだ用意してねーじゃん。」
勇希だった。直人に言われて迎えにきたらしい。・・・にしてもイキナリ女の子の部屋のドアをノックもなしに開けるのはどうだろうか・・・。
「もーっイキナリ明けないでよねー!!」
そう叫んで枕を勇希の顔面にブチあてた。

青い空に白い雲。そして絶えまなく打ち寄せる波。そう、ここは・・・
「海だぁー!!」
愛美と直人は飛びはねた。この2人とは逆に不機嫌な顔をしている奴が1人いた。
「あれ?勇希君、どうしたの?」
浮き輸を抱えた愛芙は質問した。
「朝っぱらから枕を顔面にぶっつけられたら誰だって上機嫌でいられねぇっての。」
優梨の一発がけっこう痛かったらしい。するとそこヘビーチパラソルを抱えた優梨が登場。
「イキナリ開けてくる方が悪いんでしょ!?」
「・・・・・・!」
「・・・たかが水着姿でそんなに驚くなよ。」
ボソッと直人がニタニタとつぶやいた。勇希はバコンッとビーチボールを直人の顔面にブチあてた。照れているらしい。
「いっ・・・たくねーけど勇希ってめえ何しゃがんだ!!」
「お前がアホなコト言うからだろっ。」
2人はボールを投げ合い、騒ぎ続けた。クールなイメージのあった勇希だが、その光景はノーマル少年と何ら変わりなかった。
「あははっあの2人、仲良しだねー。」
笑顔で愛美は言った。ギラギラと太陽は燃えていてとても暑かったが、そんなコトも忘れるくらい笑っていた。その顔を見て、優梨も安心し、日が暮れるまで海で遊び続けた。けれど、愛美はやっぱり無理をしていた。
「俺何か飲み物買うな。喉渇いただろ?」
「あっ、じゃ私も手伝うよ。」
そう言って優梨も勇希について行った。
「ありがとなー。」
愛美と直人は浜辺に腰をおろした。夕日がとてもキレイだった。と、愛美の顔が直人の肩に倒れた。そして大きくため息をついた。
「愛美・・・?どうした?・・・・・・辛いのか?」
愛美は首を横に振った。しかし、
「大丈夫。辛くなんかないよ。でも、辛かった・・・かな。今は平気。過去形だよ。」
笑ってはいたが、かすかに息を切らしていた。
「ゴメンね・・・。無理すんなよって言いたいでしょ?でも楽しかったから・・・あんなに笑って、はしゃいだの初めてだったから・・・。」
愛美の長い髪が風になびく。なびいた髪からはシトラス系の香りが淡くその場に広がった。・・・直人の視線が愛美から離れない。そしていつの間にか直人の手が愛美の肩に触れていた。
「おーいっ買ってきたよー。」
優梨が二人を呼ぶ声なんて聞こえない。耳に届いているのは打ち寄せる波の音と、二人の鼓動の高なりだけだった・・・。
「!!」
「何だ?あいつら返事してなくねーか?」
ひょいっと顔をだした勇希の目を優梨がバッと隠し、慌ててその場を離れる。
「ダ、ダメッ見ちゃ!!まだ戻って来てないフリしようっ。」
「は!?お、おいっ手!!離せって!!見えねえっての!!」
夕日が沈もうとしていた。直人の両手が愛美の両肩をそっと抱いた。
「・・・・・・え・・・?」
愛美は直人の目を見た。直人の顔が近づいたのがわかった。
「何なんだよ!?おいっ離せって!!」
もがき暴れる勇希。
「うるさいっ静かにしないと聞こえちゃうでしょ!?」
勇希を抑え、遠くから二人を見つめる優梨。そして、愛美と直人、重なり合う二人の唇と唇。波の音が響きわたる。
「ねえっ直人って愛美のことどう思ってるの!?」
優梨は勇希の目を隠したまま聞いた。
「とりあえず手離せ。」
そう言われて慌てて手を離した。
「で、どう・・・なの?」
真剣な目で優梨は勇希の顔を見た。勇希は話そうとしない。そしてハァとタメ息をつき、優梨は愛美のコトを話し出した。
「あの子ね、年の割にはすごく非常識で頭カラッポなの。それから身長に合わなく体重がすごく軽くてすごく細いのね。足なんかすぐ折れちゃいそうなくらい細くて・・・って見ればすぐわかるだろうけどね。」
すごく悲しそうな表情で優梨は話した。
「・・・で?それが何?」
勇希も勇希なりに真剣に話を聞いた。そして優梨は話を続けた。
「あんなに細いからかわかんないんだけど、女子の間ですごくヒドイことされちゃったんだ・・・”足が細いからで自慢するな”とか”ナマイキ!!”とか言われたらしいの。もちろん自慢したりなんてしてないのに・・・。愛美は何も悪くないのに、心を傷つけられちゃったんだ・・・。だからね、愛美には、癒される居場所が必要だと思うの!その”居場所”が直人ならイイかもって思って・・・。何か赤い実がどーたら言ってたから・・・。」
「あー、なるほどね。でも直人は・・・。」
ようやく優梨の質問に答えてくれるようだ。
「直人は・・・何?」
「何つーか・・・荒いっつーか・・・、軽い。」
夕日が沈んだ。優梨は遠くから直人を見た。そしていぶかしげな顔をして、
「軽い・・・ってどんな感じ?」
と再びそう質問した。
「アイツさ、本気で恋愛しねーんだよ。しないって言うかできないって言うか・・・。遊んでんだよ。悪く言ったらチャラチャラしてるっつーか・・・。だから直人が愛美のことをどう思ってるかなんてわかんねぇ。・・・誰にも・・・な。」
日が沈んで暗かったけど、私には勇希がどんな顔をして話していたかよく見えた。すごくあきれた目をしてて、座って頬杖をついていた。私はその姿を見下ろして聞いていた。私が一番嫌だったのは、愛美も他の女みたいに直人に遊ばれる人の一人なのかなってことで、もしそうだったら速攻で直人のことひっぱたきに行かなきゃ!!って考えてた・・・。
「わけわかんないっ何なのアイツ・・・ッ。」
ちょっとキレてみたりもした。
そして優梨と勇希は浜辺にいる愛美と直人を置いて先に帰って行ったのであった。

夕食の片づけをしているときにようやく愛美は帰ってきた。
「ゆ、優梨ちゃーんっ何で先に帰るの〜!?すっごいあせったじゃんかぁ〜!!」
半泣きで愛美は叫んだ。優梨は笑って言った。
「あははっゴメンね。何、どうしたの?何かあったの?」
「えっ!?」
愛美はドキッとした。そして言葉をつまらせ、
「あ・・・え、えっと・・・その・・・あの・・・ね・・・・・・。」
あたふたしながら顔を赤くしてそのまま黙り込んでしまった。ふっと優梨は笑った。
「とりあえずご飯食べよ。その後にでも聞かせて?ねっ?」
「う、うんっ。」

和やかな愛美達とは逆に、こちらはシリアスな雰囲気が漂っていた。
「今度は愛美か?」
仏頂面で勇希は直人に問う。それに目を合わすことなく直人はただ一言だけ答えた。
「・・・ちゃんと自分の本音は話したさ。」
「・・・ふーん・・・?」
何を愛美に言ったかは教えてくれなかったが、今までとは少し違うかもしれない・・・と思う勇希であった。
「”本気で恋愛がしたい”・・・?そんなこと言ってたの?」
12時を過ぎていたがこちらの女達の会話は終わろうともしていなかった。
「うん・・・。何かね、この人だ!!とか思って付き合っても長続きしないとか、つい軽く遊んじゃったり、何か恋愛に対して本気になれないって・・・それで”本気で恋愛したいんだ”ってすごく真剣な顔で言ってた・・・・・・。」
優梨は驚いた。何で愛美にはそんなこと言うのか・・・とか今まで遊んできた女には絶対言ってないんじゃない
のか・・・って。
「それ、キス・・・してから言うんだよ。だからね、『じゃあ私と”本気の恋愛”してみない?』って言いたかった・・・。でも私とも遊びで終わるのは嫌だし悲しかったから言えなかったんだ・・・。だけど、私の方がもう本気になってきちゃってるの・・・。あんな遊びかもしれない一瞬で、私の実ははじけちゃったんだもん・・・っ。」
愛美は泣きそうなのを一生懸命こらえながらそう語った。優梨は窓から見える満月を見ながら言った。
「大丈夫だよ。愛美となら直人も”本気の恋愛”きっとできるよ。無理でも頑張ってみようよ。頑張ることは誰にだってできるんだから・・・。」
夜が深けていく。2人はベットにも入らずにそのまま肩を寄り添って寝てしまった。澄んだ海のように気持ちよさそうに寝ていた。そんな幸せな感じとは裏腹に、たくさんの悲劇が起ころうとしていた。そしてそれは数日後のある日、突然やってきたのだった・・・。

暑くも涼しくもない日の午後、愛美は病院のベットで寝ていた。特別な個室に入れられ、優梨はガラスごしに愛美のことを見ていた。すると直人と勇希が到着した。走ってきたのか、すごく息切れしていた。
「ハァ・・・ま、愛美は?ハァ・・・っ、疲れた・・・。」
「だいぶ落ち着いたみたい。まだ目は覚まさないけど・・・。」
「どうしたんだ?愛美に何が起きたってんだ?イキナリ電話ですぐ病院に来いだなんてよ・・・。」
優梨は下を向いて言った。
「たくさん血を吐いて倒れたの・・・。」
「!!」
2人は目を大きく見開いて驚いた。そして、顔を見合わせた。—優梨は迷った。ここまできたらあのコトを話すべきか否か・・・。勝手に言って愛美が後から言わないでほしかったと言ってきたりしたら・・・。と、勇希が
「優梨?どうした?」
と聞いても耳には届いても頭の中には入っていなかった。そして優梨は考え、あのコトを話すことにした。
「愛美ね、病気・・・なんだよね・・・。」
「え・・・っ病気持ちなのか!?」
「何!?何の病気!?クーラー病か!?」
「いや、クーラー病はねぇだろ。」
勇希が直人にツッコミを入れる。
「で、何の病気なんだ?」
改めて勇希が真剣に聞いた。その問いに優梨は・・・
「わかんないんだ。本当、正直言って・・・。」
「は?」
「新種の病気なんだって。愛美の主治医の人が言ってた。この世にはない病原体らしいんだ。生まれたときからあったらしくって、その病原体ね、生まれたときと比べたらものすごく増えてるらしいの。本当は生まれてすぐ死んでもおかしくなかったって・・・。」
だんだ企言葉がつまっていく・・・。
「でももう17年たってるぞ?」
直人が疑問を持ちかけた。
「それは色んな薬を飲んで・・・。でもその薬は人に与えて平気かもわからない薬ばっかりだったんだけど・・・。」
直人に怒りが込み上げてきた。
「はあ!?何でそんな危ねーもん使わすんだ!?治るどころか悪くなったらどーすんだ!!」
「気持ちはわかるけど、治し方なんてないんだよ!!わかんないんだよ!!頼れる薬も、医術も、何もないんだよ!!」
優梨は悔しさが込み上げてきた。涙をこらえているのが2人にはすぐわかった。
「わけのわかんねー病気だから対処法がないってことってことか・・・。」
「そんなことって・・・っ!!」
はがゆくてたまらなかった。愛美は暑さで倒れたとき以外でも辛いときがあったんだ・・・。気づいてやれなかった・・・。いつも近くにいたのに・・・!!直人はグッと拳を握りしめた。
「これが現実なんだよ・・・。」
冷たい雰囲気だった。蝉の鳴き声がいやにうるさく感じた。と、その時・・・
「・・・みんな・・・?」
3人は一斉に振り向いた。愛美が目をさましたのだ。愛美の体の各部には赤やら青やらたくさんのコードがつながれていた。その光景が痛々しくて、直人は見ていられなかった。勇希もまたそうだった。二人は愛美に背を向けた。愛美はそれを見て優梨に言った。
「あのコト、いったんだね・・・。」
「・・・ゴメン、勝手に・・・。」
「ううん、イイんだよ。どうせずっと隠し通すのは無理なんだし・・・。」
そう言って無理矢理起き上がった。
「ダ、ダメだよ愛美 起き上がっちゃ・・・。」
「平気・・・っ。ねぇ優梨ちゃん、私今まで何回人院したかなぁ。数えきれないよねぇ。学校に行けたの、何回だろ・・・?こんな風になってまで何で生きていられるんだろ・・・。」
「生きていることを否定すんなよ。今まで生きてこれたんだからよ。」
直人は愛美に顔を向けないまま言った。
「・・・ありがとう。そーだよね、すぐ死んでもおかしくない体なのに17年間も生きてこれたんだもんね。私はとんでもないラッキーガールだ!!」
愛美は笑顔でそう言った。直人も微妙に愛美の方を振り向き、微笑した。
「あっコラ、雛瀬さん!!ダメじゃない起き上がっちゃ!!」
看護婦さんが来た。どうやら診察があるようなので3人は家へ帰った。

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