第五回島清ジュニア文芸賞「奨励賞」散文「有衣とルークの春夏秋冬」その5

ページ番号1002744  更新日 2022年2月15日

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美川小学校六年 山崎紘彰

第五章 冬 卒業

〈前編〉もうすぐ卒業
今日はおおみそか。有衣家は今、カウントダウンの真っ最中だった。
「3・2・1・・・・あけましておめでとうごさいます。」
有衣は元気よく言った。
「はい、おめでとうございます。」
お父さんもにこにこしながらそう言った。
ルークもこたつの上にのって、静かに
「おめでとう」
といった。
「さあ有衣。カウントダウンをしたら、寝るって約束したでしょ。」
お母さんは、椅子に座りながら言った。
「でもー。だって、まだ除夜の鐘、全部聞いてないよ。」
有衣はお母さんに頼んだ。
「でもー、でもだめ、ちゃんと約束したんだから、もう寝なさい。」
「うーん」
有衣は、少し渋っていたが、最終的に部屋に帰っていった。
その三十分後
「あの子も、もうすぐ卒業かぁ」
お父さんはしみじみといった。
「ほんとね。月日のたつのは早いものだわ」
お母さんは食器を洗いながら言った。
「あの子が、六月の十二日に生まれてからもう十二年もたつのか。ぼくらにとっては、まるで昨日のことのように感じるね。」
お父さんはお茶を一口すすった。
「あの子が幼稚園の時に、あなたがルークを拾ってきて・・・・・いまでは有衣とルークはきょうだいのようなものだわ。」
お母さんは少しも、食器洗いの手をゆるめずに言った。
「そうだね。あの子の入学式の時、校門で写真をとってやったら、目をつぶってたっけ。それに良い友達もできたし、ほんとうにいい子に育ってくれたよ。」
お父さんは、コトッとお茶のコップをおいた。
「これからも良い子にそだってくれたらいいけど・・・・
お母さんは心配そうに言った。
「たぶん大丈夫だよ」
有衣の両親がリビングで話している時有衣は、リビングのドアの影にかくれていた。有衣は夜中にのどが渇いてお茶を飲もうとして、一階に降りてきたのであった。有衣は出るに出られず、ただただ両親の話を聞いていた。
有衣は両親の話を聞いてから
『わたしももうすぐ、中学生だからもっとしっかりしなきゃ。』
と思ったという。

〈後編〉卒業式
午前七時十分。今日は、卒業式
有衣は、朝から張りきっていた。
「お母さーん。ご飯まだ。早くしないと卒業式に遅れちゃうよ」
有衣が大きな声で聞くと
「もう十分まってー。それまで二階で待ってなさい。」
と、お母さんが言った。有衣は、
「しょうがないなぁ。」
と、言いながら二階へ上がっていった。
二階へ上がり、有衣の部屋のドアを開けると、そこにはルークがいた。
「有衣も、もう小学校卒業なんだな」
ルークが言うと、有衣は、
「そうだけど。でもびみょーにいやな気がするんだよ。だつて中学校に上がると部活もあるし、勉強も難しくなるし・…大変でしょ」
と、有衣はため息をつきそうなかんじで言つた。
「有衣。おれが思うに、大変になっても、それを乗り越えたらきっといいことがあると思うよ。」
ルークは年寄りくさく言った。その時
「有衣ーもうご飯よー」
とお母さんが言った。有衣は、
「それじゃあねルーク。わたし卒業式に行ってくるわ。」
と、ルークに声をかけみと、いそいで下に降りていつた。
一人(一匹?)残されたルークは、
「有衣も、大きくなったもんだなあ」
とつぶやいたという。
三十分後 小岩井小学校
「いよいよ始まるね。卒業式」
沙樹は、有衣に、にっこりしながら言つた。
「うん。そうだね」
有衣も、うれしそうに言った。
「沙樹ちゃんと友達になって、いろんなことをして遊んだね。」
有衣がしみじみというと、沙樹は、
「ほんとうに。中学校になってもずっと友達でいようね。」
と言った。有衣は、
『沙樹ちゃんと友達になれて本当によかった。』
と心のそこからおもった。
「みんなぁ。もう体育館に移動してくれ!主役は六年だぞしっかりしてくれよ。」
と羽称先生は叫んだ。
しばらくして、六年全員が体育館に移動した。
そして、いよいよ卒業式が始まった。
客席には、有衣のお父さんやお母さん、他の子の両親もきている。
有衣の頭の中に、これまでの六年間の出来事が、走馬燈のようにかけめぐった。
一年生 学校にはいったばっかりで、すごく緊張していた。
二年生 ちょっと学校に慣れてきて勉強もがんばれた。
三年生 沙樹と、友達になれた。本当に良かった。
四年生 担任だった青木先生にとってもかわいがってもらってうれしかった。
五年生 いろいろな人と仲良くなれた。
六年生 そして、今、小学校を卒業する。
有衣はめずらしく、校長先生の話や町長さんの話をしっかりと聞き、そうして、有衣は自分が卒業するのを実感していた。
そして、有衣は校長先生から卒業証書を受けた。
卒業式後・・・・安藤家
「ふう、これで、事実上、小学校を卒業したんだね・・・」
有衣は両親に向かってそう言った。すると、お父さんは
「それにしても、六年間よく頑張ってこれたなぁ」
と言った。お母さんも
「ほんとねぇ、有衣。これからも中学校、高校とがんばってね。」
と言った。有衣は、
「うん、もちろん」
と答えた。
有衣は・充実感と感謝の気持ちでいっぱいの心の中で、
「ありがとう」とつぶやいた。

エピローグ
有衣「どうでしたか。わたしとルーク。物語はこれで終わるわけではありません。」
ルーク「あとのことは、みなさんのご想像におまかせします。」
有衣・ルークの春夏秋冬、「この物語を読んでくれた皆さん。本当にありがとうございました。」
有衣とルークの春夏秋冬〈完〉

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