第七回島清ジュニア文芸賞「韻文賞」(中学生の部)「山の信号機」
美川中学校3年 東 陽子
夏がもう終わる頃
タヌキの親子が山を散歩しています
あっ、パパ
見て、いちょうの葉っぱが
黄色くなってるよ
まるで、野原を飛びまわる
ちょうちょうみたいだ
ねぇ、パパ
どうしていちょうは
葉っぱを黄色くするの
いいかい、ぼうや
よく聞くんだよ
山の彩りは
妖精のための信号なんだよ
今日は温かいだろう
それはね、妖精たちのおかげなんだ
妖精があちこち飛びまわって
ぽかぽかの体をぶつけてくる
だから今日は暖かいのさ
パパは小さい頃
大あくびをした拍子に
妖精を1匹
口の中に閉じこめてしまったんだ
そのときに聞いたのさ
妖精はパパの口の中でこう言うんだ
ああ、もう信号が黄色になるわ
私はおうちに帰らなきゃいけないの
私たちが動き回っていられるのは
青信号の間だけ
黄色信号になったなら
そろそろおうちに帰らなきゃ
赤信号になったらそれは
もう来ないでねっていう
止まれのサイン
信号はしばらくおやすみなさい
やがて真っ白な時をこえ
信号は再び動きだす
だんだん青い色を照らしだすの・・・
きっと妖精たちは今ごろ
信号が黄色に変わるのを見て
慌てて帰る準備をしているだろうね
そしてじきに
この山は赤信号になる
その後、真っ白な季節が来て
妖精も、信号機もぼくたちも
みんなおやすみだね
そして、草木が柔らかい芽を出したとき
信号機はまた動きだす
妖精もまた動きだす
そして、ぼくたちも・・・
パパ、もうぼくたちも帰らなきゃ
早くしないと
黄色信号に変わっちゃうよ
タヌキの親子は
もと来た道を寄りそって
歩いていった
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