第八回島清ジュニア文芸賞「散文賞」(中学生の部)「不思議な冒険」

ページ番号1002712  更新日 2022年2月15日

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美川中学校 三年 川岸 莉子

私は今までママからたくさんの話を聞いてきた。それは、ママがスパイになったとか、未来へ行って私の結婚式を見てきたとか、遠くへ仕事に行っているらしいパパと心が入れ替わったとか、どれも信じられない話だけどママが話をしているときの顔はいつも真剣だから信じてあげている。私はもう十四歳で中学二年生だから
「小さい子じゃあるまいし、もう部屋に来て長い話なんてしなくていいから。」
ってママに言っても、ママは笑って毎日夜九時五十九分に私の部屋に来る。そしてベッドに座って十時になるのを確認すると
「ミキ、今日の話はね・・・。」
と、ママは話し始める。
下の方から階段を上がる音が聞こえてきた。ママだ。上がるときのスリッパの音がすごく独特になり響くんだもの。一度聞いてみるといいわ。
私はすぐベッドにもぐりこむ。だって、そうしないとママはいつも怒るんだもん。
「あら、ミキ。もう寝るのね、えらいわ。」
ママが怒るからよ。私は心の中でつぶやく。
ママは私のベッドに座り、話し始める。十時になったのを確認して。
「ミキ、今日の話はね・・・。」

ママが、まだミキぐらいの歳だったかな。ミキのひいおばあちゃん、魔女だったの。知ってるでしょ? 今は魔力がうすれていってるらしいんだけど。え? 分からない? ほら、あの通りの! それでね、そのときの話なんだけど、ママはいつも夏休みになると、おばあちゃんの家に行っていたのよ。ミキも行っていたでしょう? ママはそのとき、不思議な冒険をしたの。

私は、すいこまれるようにママの話を聞いていた。まるで、ママの子供の頃にタイムスリップしたかのように・・・。

「じゃあ、行ってくるね!」
ユキは元気よく母に言う。(ママの名前はユキだ。)
「いってらっしゃい。その地図通りに行けばおばあちゃんの家に着くからね。道草しちゃダメよ。おばあちゃん、かなりの心配性なんだから。」
「分かってるわよう。」
ユキは小走りで家を出ようとした。そして庭にある、不思議な・・・今まで見たこともない花を見つけた。その花は小さいが、存在感がすごくあり、白色ですごく綺麗な花だった。——おばあちゃんにあげたら、嬉しがるかな。
ユキはそっと、その花を採る。
すると、いきなりその花は光り、ユキの体も光りだす。
「なっ、何これ?!」
目を開けると、そこは何もかもが大きくなった世界だった。あの白い花は無くなっていた。
いつもは庭から五歩でいける玄関も、百歩以上走らないといけないような状態になっている。
——なんでこんな周りの物が大きくなっちゃうの?
ちょっとした段差も、ユキの身長以上あり上がることは難しかった。
もう一度、庭へ戻ってみると、そこにはユキの母がいた。
「ママ? 大丈夫?! 周りの物がいきなり大きくなっちゃったの!」
ユキの母は何も気付かない様子で庭の手入れをしている。
「ねえママ! 返事をしてよ!」
ユキは母のもとへかけ寄った。
「え?!」
驚いたことに、母は巨人になっていた。
「なんで? なんで皆大きくなったの?!」
すると、ユキの母は口を開いた。
「あら、ミニシロ花がなくなっているわ。」
ユキは耳をおさえた。
「ママ! 声が大きいわ。もっと小さい声で話してよ!」
ユキの母は、その声が聞こえたらしく、下を見た。
「あら、ユキ。あなた、ミニシロ花を採ったでしょ。」
「ミニシロ花? あの・・・白くて綺麗な花のこと?」
「えぇ、そうよ。ミニシロ花はね・・・。」
ユキの母の説明によると、ミニシロ花は世界で一番小さいが、存在感というものが強くでている。そして、その花に触れた者は小さくなり、そのミニシロ花に触れ、小さくなった者に触れる者も小さくなるという、ややこしい魔力をもった花である。
「それだけ?」
「あら、他に何かあるの?」
ユキはまた耳をふさぐ。
「もっと小さく話してよ!」
「あら、ごめんなさい。」
ユキの母は雑草を摘み取り、ユキをその上に乗せようとする。
「あれ? 雑草は小さくならないの?」
「小さくなるのは人間だけなのよ。」
「ねぇ、どうしたら私、もとの大きさに戻れるの?」
「それはね・・・。」

ママは口を閉じた。ママの話が途中で終わるなんて初めてだ。
「どうしたの、ママ。続きは?」
「あら、もうこんな時間。寝なさい、ミキ。」
「ねえママ! 続きは?」
「あ、ミキ。明日、ひいおばあちゃんの所へ行って、もらってきてほしいものがあるの。行けば分かるから。よろしくね。」
そう言ってママは部屋から出ていった。ママは、いつも話がちゃんと終わるまで部屋から出ていかないのに・・・。
私はそうやってママのことばっかり考えているうちに、いつのまにか夢の中へと行ってしまった。
目が覚めると、時計は朝の七時二十八分をさしていた。
「ママ?」
ママはいつも、七時十五分に私を起こしてくれるはずなのに・・・。耳をすますと、やけに家の中は静かだった。
「ママいないの?!」
ドアを開けて、いつも聞こえるはずのパンを焼く音、ママが朝ご飯を作る音、ママが毎朝見ているニュース番組の音が聞こえなかった。なにひとつ。
私はすぐ下へおりた。ママの部屋は一階の和室だから。まだ寝ているのかもしれないし、もしかしたらママは、風邪をひいているのかもしれない。もし、どっちでもなかったら、きっと私は夢を見ているの。ママがいなくなっちゃう夢。だけど、私はもう少しでこの夢の中にいられなくなっちゃうの。なんでかって? ママが起こしにきてくれるから。ミキ、十五分よ。起きなさい。って。そして私はキッチンへ行って、焼きたてのパンにマーガリンをぬって、牛乳を飲んで、ひいおばあちゃんの家に行く支度をするの。ママにかわいい服、選んでもらうのよ。
私は、ひいおばあちゃんに会ったときのあいさつを考えながら、一階のドアを開けていった。お風呂場にはいなかったし、トイレにもいなかった。キッチンも、リビングにもいなかったの。そして最後は和室。ママの部屋。私は深呼吸して戸を開けた。勢いよく。
「ママ?! 風邪は大丈夫?」
だけど、そこにはママはいなかったの。布団も片付いていて、机にも物はちらばってなくて、置いてあったのは、コーヒーが入っているマグカップだけ。まだ温かかった。まだママはこの家の中にいる。
「ママ? かくれても無駄よ! 実は私・・・かくれんぼの鬼は小さい頃から特訓しているんだから。」
そして私はもう一度、一階のすべての部屋を探し、二階の部屋も探した。二階は三部屋あって、一つは空き部屋、もう一つは私の部屋、そしてパパの部屋なの。ママは、パパに会いに行ったのかもしれない。そして、パパにこう言うのかもしれない。
「ミキったらね、ひどいのよ。私にね、話なんかしなくていいからって言うのに、私が話を途中で終わらすと、続きは?って何度も何度も言うのよ。」
そして、パパはこう言うの。
「それはひどいな。ママ、今日からここに住んでいいぞ。パパと一緒に仕事しよう。」
って。でもママはきっとこう言うわ。
「でも、ミキは今まで私の話を信じてくれてたの。だから、ミキのもとへ戻らなくちゃ。パパは仕事頑張ってね。」
そしてママは私の所へくるの。「パパに勝ったわ!」って。
時計は、もう八時をさしていた。もうママは、この家にいないって分かった。私はお腹がすいていたから、キッチンへ行った。ママは、何も作ってくれなかったし、私は自分で作れるものを作ろうとしたの。卵焼きとか。冷蔵庫をあけると、そこに朝ご飯が入っていた。“パンを焼いて一緒に食べてね”ってママからの手紙が、お皿にはってあった。ママは、私のこと考えてくれてたんだ。少し、涙がでた。そして私は朝食を食べた。そして、ふと頭に浮かんできたの。ひいおばあちゃんのこと。ママはあのとき、取りにいってほしい物がある。と言ったの。もしかしたら、待ちきれなくて先に行ったのかもしれない。私はいそいで支度をして、家を出た。ひいおばあちゃんの家なら知っている。毎年行ってるんだもん。
まず、玄関から五歩で行ける庭まで行き、右に十歩ほど歩いたとこにある、信号をわたる。そして、パン屋さんと、町で一番おいしいと有名なケーキ屋さんの前を通って、花に包まれた看板の前で私は止まった。
<花風通り>
その文字を確認すると、その通りに並ぶ住宅の中で、一番目立つ家を探すの。それは、家中植物でかこまれている、私のひいおばあちゃんの家。
私は、ひいおばあちゃんの家にある庭を見てみた。そこには図鑑に載っていない、見たこともない花や草がはえていた。そこに、すごい存在感の花があった。白くて、すごく綺麗な花。私は自然と手をのばしていた。そう、私はその花をとろうとしていたの。
「おや、人の花を勝手にとるのかね。」
私は驚いて、玄関の方をふり向いた。
ひいおばあちゃんがいた。
「その花を見てはいけないよ。」
ひいおばあちゃんは私の横に座った。
「この花・・・名前は知っとるかの。」
「ミニシロ花。」
昨日、ママの話で聞いた花。触れた者を小さくしてしまう——・・・。
「ユキちゃんから聞いたのか。この花はな、気に入った者に魔法をかけ、無理矢理花に触れさそうとする。感情がある花でな、やっかいなんじゃ。ものすごく。」
そうだったんだ。さっき私はこの花に魔法をかけられていたんだ。その魔法をひいおばあちゃんは解いてくれたんだ。ママは・・・その魔法にかかって小さくなってしまったんだ。
「さ、中にお入り。お茶でもご馳走しよう。なんせ、一年も会っていないんだからね。」
そういえば、最後にひいおばあちゃんに会ったのは私が十三歳の夏休みの頃だったかな。
ひいおばあちゃんの家は去年とたいして変わっていなかった。ただ、植物が増えただけ。どうしてこんなに植物が多いのに、虫がいないの? とひいおばあちゃんに聞くと、この植物達は全部魔力を持っているからだよ。って答えてくれた。ひいおばあちゃんが言うにはあの窓の近くに咲いている赤い花は、血がでたときにお茶にして飲むと、すぐ治るらしい。そして、あの玄関にあった青い葉は、絆創膏にして傷口にはると、三分で治るらしい。私の家にあるのか、今度探してみよう。
ひいおばあちゃんがいれてくれたお茶は、すごくおいしかった。体が温まったのと同時に、今まで忘れていたことを思い出した。
「何か思い出せたかね。」
私の心がよめるのかな。ひいおばあちゃんは何でもお見通しだ。
「そのお茶には、思い葉という葉が入っていてな、忘れていたことをすぐ思い出させてくれるんだよ。」
そうだったんだ・・・テスト前にこのお茶を飲んだら、良い点数をとれるかもしれない。
「で、何を思い出したかね。」
「ママのことです。」
「ほう・・・そういえばユキちゃんはどこにおるのかね。今日は何日だい?」
「今日は、八月十三日だよ。ママ・・・いなくなっちゃったの。」
ひいおばあちゃんの顔が一瞬、驚いた顔になった。だけど、すぐ戻った。
「そりゃ大変じゃ。ちょいと待っとれ。」
そしてひいおばあちゃんは台所へ行った。
何分くらいたっただろう・・・ひいおばあちゃんの家には、時計もカレンダーもテレビも無かった。私はひいおばあちゃんが戻ってくる間、部屋にある植物を見てまわっていた。
すると、そこに写真が置いて・・・写真が写っている植物が生えていた。よくみると、それはママの写真だった。ひいおばあちゃんとママが黒い服を着て、ほうきを持っている。そういえば、ママ言ってた。今のひいおばあちゃん、魔力がうすれてきているって・・・もしかして、ひいおばあちゃんは魔力がまだ残っているから、長生きしているのかもしれない。もしも魔力がなくなったら? 私のおばあちゃんが今年の三月に亡くなったのも魔力が無くなったからなのかもしれない。
私は急に怖くなって、窓の外を見た。
「待たしてごめんねぇ。」
ひいおばあちゃんが来た。手には袋を持っている。
「その袋、何?」
「まあ、話を聞いとくれ。」
そして私はイスにすわり、ひいおばあちゃんの話を聞いた。

ユキちゃんがいなくなったのは、ミニシロ花のせいじゃ。ミニシロ花はな、人を小さくするだけじゃなくて、もう一つ強力な魔法をかけるんじゃ。ユキちゃんは、五月十三日にミニシロ花に触れ、わしの所までやって来た。そう、ちょうど今から・・・ええい、何年前か忘れてしまったわい。わしはユキちゃんに大きくなる薬をわたした。ユキちゃんは元に戻ったよ。その時だけ。ミニシロ花には感情があると話したな。ミニシロ花はユキちゃんが飲んだ薬に勝とうとするんじゃ。負けず嫌いなんじゃのう。わしはもう魔力もおちていることだから、作った薬もそう強くはないんじゃ。わしの計算によると一ヶ月・・・たつと、薬の効果は切れ、ユキちゃんは再び小さくなるのじゃ。それからユキちゃんは毎年ここに来て、薬を持っていったのじゃ。

ひいおばあちゃんの話は終った。
今日は八月十三日。ママがミニシロ花に触れたのは、五月十三日。今日、ママがいなくなっているということは、ママは薬をもらうことを忘れて、小さくなっちゃったってこと?
「ユキちゃん、昨日とりにこなかったからのう。」
「どうやったら治る?! ママをどうしたら見付けられる?!」
ひいおばあちゃんは私に落ちつけと言うようにお茶をいれてくれた。私は、それをいっき飲みして、ひいおばあちゃんを見つめた。
「この薬をユキちゃんに飲ませるのじゃ。」
ひいおばあちゃんが薬を机の上に置いた。
「これが大きくなる薬なのね。」
「そうじゃ。でも、ミキちゃんはユキちゃんを絶対見つけられない。」
「どうして?!」
私とママは親子なのに!
「ミキちゃんは魔力がないからのう。小さくなった者は魔力を持つ者にしか見れない。」
じゃあ、どうすればいいの?という言葉の代わりに私の目からぽろぽろと涙がこぼれていた。
「あきらめるのはまだ早いのう。ミキちゃんよ、わしに良い考えがあるのじゃ。」
「良い考え?」
ひいおばあちゃんの話によると、まず初めに私はひいおばあちゃんが作った魔力の小さいミニシロ花の薬を飲む。そして小さくなる魔法にかかった私がママを探す。だけど、私が飲む薬の効果は二時間。それを過ぎると、私は大きくなる薬を飲んでも何をしても、もとには戻らない。
私はひいおばあちゃんにお礼を言って、いそいで家に向かった。
ひいおばあちゃんの家って不思議。私がひいおばあちゃんの家に行ったのは、お昼だったのに、今はもう夜の七時くらい。家にも魔法をかけているのかしら・・・。
家につくと、私は時計を見た。七時三十分。今から二時間だから、九時三十分までにママを探して薬を飲む。
そして私は小さくなる薬を飲んだ・・・。
ママの子供の頃みたいに体が光るかな?と思って目をかたくつぶっていた。けど、そんな事は起こらなかった。いつのまにか私は小さくなっていた。私はまず、ママの部屋から探してみることにした。だけどそんな簡単にはいかなかった。私は身長一メートル五十六センチから、五センチくらいに変わっていたのだ。ママの部屋に入ることはできても、机の上は探せない。ママの部屋はみわたすかぎりたたみの緑だらけだった。草原にいる感じだった。
「ママー? いるー? 返事してー!」
返事は返ってこなかった。
机の近くまで来て、あるものに気付いた。はしご。割りばしで、ていねいに作ってあるミニサイズのはしごだった。登ってみると、朝に見たコーヒーがはいっているマグカップに変化があった。ストローがとりつけられていた。マグカップには、のどがかわいたら飲んでね。と書いてあった・・・手造りなのだろうか。飲んでみると、中は空なのか、なんにもでてこなかった。よく見ると、ストローに小さい字で、ごめん。ママ、全部飲んじゃった。と書いてあった。私はあきらめて、リビングへ戻った。ソファに座ろうと思っても、高すぎて登れないし、テレビが見たくても、リモコンは机の上。しかもはしごはない。電源もとどかない。私はあきらめて、廊下にでた。トイレのドアは閉まっているし、はしごもないから、ママがいるはずない。そして、お風呂場のドアが少し開いているのに気付いた。しかも、電気がついている! 私は走ってお風呂場へ向かった。
だけど、お風呂場には誰もいなかった。お風呂場をのぞくと、小さな傘が置いてあった。人形で遊ぶときに使うようなおもちゃの傘で閉じることはできなかった。ママが遊んだのかな。と思い、次へ向かった。
少し、嫌な感じがした。時間のことを考えていなかった。大きいときは、リビングからお風呂場まですぐついたけど、小さくなってからは、かなりの距離がある。そして、かなりの時間がかかっているはずだ。
リビングへ戻ると、もう九時を過ぎていた。あと少ししかない・・・一階には、ママいなかったし、残るは二階なんだけど・・・
私は階段前に来ていた。
ママは多分、二階にいる。何かを使って二階へいったんだ・・・。考えようとしても、時間が気になって集中できない。
ママは今日中に薬を飲まなきゃ、もとに戻れなくなるのに。私も、大きくなったらママを一生見付けられなくなる。
そこに、チリンと鈴の音がした。ふり向くと、飼い猫だった。
「ユミ。」
私が小さいときに、ママがひろってきた。名前は私とママの名前をとって<ユミ>
「ユミ、どうしよう。ママ、小さいままになっちゃうよ。」
ユミは私のことをじっと見ていた。
「ミキちゃんも小さくなっちゃったのね。」
ユミが話した。
「ユミ、あなた話せるの?」
「だってミキちゃん魔法にかかっているじゃない。あたし、ユキちゃんと話していたのよ。さっき。」
「ユミ! 二階へいける?」
「おやすいごようよ。そしたら、ご飯の量増やしてね。焼魚がいいにゃあ。」
「分かった! ママに言っとく!」
私はユミのシッポからユミの背中にのって首輪をつかんだ。ユミの体は温かくて、眠りそうになった。
「いくわよ。」
ユミはとんだ。とんで、三段目に着地して、またとんで、そこから三段目に着地して・・・それを繰り返して二階へ行くことができた。
「ありがとう、ユミ。本当はもっと話していたいんだけど、私、ママを助けなきゃならないの。」
「そうなの。分かったわ。ユキちゃん、あなたの部屋のベッドの上にいるから。」
「ありがとう、ユミ。そこまで連れていってくれる?」
「おやすいごようよ。そのかわり、一日中あたしと遊んでいてね。」
「分かったわ。今度ひいおばあちゃんの家に行きましょう。」
「賛成。あたし、あのおばあちゃん大好き。」
そして私はユミの上に乗って、ベッドについた。
そこに、ママがいた。座っていた。
「あら、ミキ。小さくなったのね。」
「うん。今、何時?」
「九時二十八分よ。」
私は走ってママの所へいき、薬をわたした。
「あら、ありがとう。行けばすぐ分かったでしょ? 私としたことがつい忘れてしまって。」
「いいよ、ママ。早く飲もう。」
「そうね。」
二人同時に薬を飲んだ。ママの体は光ったけど、私は光らなかった。なんで?
時刻は九時三十分。ぎりぎりセーフ。
ユミがニャアと鳴いた。
「ユミ、ありがとう。」
ユミを抱きしめる。いつもはジタバタするくせに、今日はおとなしかった。
「さ、ご飯でも食べよっか。」
ユミにはちゃんと焼魚をあげた。
時刻は九時五十八分。
今日はママは私の部屋にこない。私がママの部屋にいくの。
九時五十九分。
「ママ? ちゃんと布団に入っている?」
「ええ、入ってるわ。だってもう九時五十九分よ。」
そして私はママの横に座り、話し始める。
「ママ、今日の話はね・・・。」
十時になったのを確認して。

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