第四回島清ジュニア文芸賞「散文賞」(小学生の部)「海の生き物たちのさけび」

ページ番号1002745  更新日 2022年2月15日

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美川小学校5年 山崎絋彰

1、タンとジュン生まれる

ある海の海草の中で、10個の魚の卵から二つがかえりました。その魚の赤ちゃんの名は、タンとジュンといいました。
まず、タンがジュンに話かけました。
「なあ、ジュン、なんでほかの仲問はまだ生まれないの」
「さあ、僕にはわからないよ。」とジュンが答えました。
「もうすぐしたら、生まれてくるかなあ」とタンが言いました。
でも3日待っても、5日待っても、仲問たちは生まれてきません。そのうち、卵も黒く濁ってきました。
ちょうどその時、ウナギのおじいさんが通りかかり、タンたちに話しかけました。
「おやおや、坊やたちそんなところで何をしているんだい。」
すると、ジュンが、「いつまでたっても、仲問たちが生まれてこないんです。」と言いました。
すると、ウナギのおじいさんは、
「2人とも、この海の水を見てごらん。きたないだろ。坊やたちの仲間が生まれなかったのは、この水のせいなんだよ。昔は、こんなに水は汚くなかった。ゴミもなかったもんさ。でも、いまは、海はもうゴミへ箱のように汚くなってしまった。悲し人でいるのは君たちだけではないんだ。わしの友達の南の海のサンゴや東のイルカ、西の岩の中に住むタコ、北の海の浜辺に住んでいるカニたちも、君たちと同じように苦しんでいるんだ。君たちも、これからの大海原の旅の途中で、訪ねてごらん。」と言いました。
ここから、タンとジュンの旅がはじまりました。

2、サンゴが住む南の海

タンとジュンたちは、ウナギのおじいさんにいわれ、まず、はじめに、サンゴの海へ向かいました。途中で、あることにきがっきました。向こうから、サンゴの中に住んでいた渇虫藻たちがやってきました。何か寂しそうな顔をしています。
「君たち、どうしたんだい。」
とタンが聞きました。すると、ある渇虫藻が、
「ぼくたちとサンゴが住んでいた南の海が住みにくくなってきたんだ。」
といいました。また、ある渇虫藻が
「それは、地球の温暖化によって、ぼくたちやサンゴが住む海の水温が上がりはじめたんだ。だから、ぽくたちは、がまんできなくて逃げてきたんだけど、残ったサンゴたちが大変なんだ。」
「どうしてなんだい」
とタンが聞くと、渇虫藻は
「ぼくたちがいないとサンゴたちが死んでしまうんだ」
と言いました。するとタンは
「そんなに心配なら、みんなでサンゴたちの所へもどろうよ。」
と言いましたが、渇虫藻たちは、
「だめだよ、そこは暖かすぎてとてもぼくたちがくらせる所じゃなくなったんだ。」
と言いました。それでジュンが
「ぼくたちを案内してくれるだけでいいから、いっしょに行ってくれないか。」とたのみました。
渇虫藻たちは、
「案内するだけだったら、いっしょに行ってあげます。」
と言ってくれたので、内心ほっとしたタンたちでした。
そして、タン、ジュン、渇虫藻たちはサンゴたちの所へ向かいました。ところが、そこにまっていたのはものすごい光景でした。
「ここが、君たちの住んでいたサンゴたちかい。」
とタンが言いました。すると、ある渇虫藻が、
「はいそうです。」
と答えました。
そこは、まさにサンゴの墓場でした。白く白化したサンゴたちが、林のようにならんでいました。
「ぼくたちが、いない間にこんなにひどいことになっていたなんて。」
とある渇虫藻が言いました。ジュンは、
「ウナギのおじいさんが言っていたことはこのことだったのか、でもこれはひどい。」
と言いました。すると、タンは渇虫藻たちに
「君たちはこれからどうするんだい」
と言いました。すると、渇虫藻たちは
「ぼくたちは、これを、機会にほかの所へうつります。だから皆さん、さようなら。」
と言いタンたちは、渇虫藻とわかれました。

3、イルカの海

タンたちは、サンゴの海から東のイルカの海に向かいました。ところが、途中に水がにごってきて、そのとき視界が真っ暗になりタンたちは意識を失いました。意識がもどったタンがいた場所は、岩のどうくつのような所でした。ジュンも、いっしょに横でねていました。タンは、早くイルカの海へ行かなければと思い、そとにでようと思いましたが、出口がありません。
「どうしよう」
と思いましたが、タンは夜とかん違いをして、また寝てしまいました。
次の朝ジュンとタンは、自分たちを助けてくれたのは、イルカたちだと気づきました。そして、二人で
「助けてくれてありがとうございました。」
と言いました。するとイルカは、
「いいよ、いいよ、でも君たちを助けた理由はね、ぼくの甥と原因が、いっしょだったからなんだ」
といいました。するとジュンは、
「その話聞かせてください」
と言いました。するとイルカは、
「ああ、いいよ聞かせてあげよう」
とイルカは、言ってくれました。そしてイルカは、話し始めました。
「わたしの、甥は奇形で生まれてきたんだ。」「奇形って」
とタンがきくと、イルカは
「しつぽが曲がつて生まれてきたんだよ。」
といい、また話をはじめました。
「わたしの甥は、しっぽが曲がって生まれてきた。そのため、姉も難産で苦しんだよ。甥は必死に生きようとしていたけど、しっぽが曲がっていたからよく泳げない。それで、5年前に、生まれて半年で死んだよ。さあこれで、話は終りだ」
といいました。
ジュンは、イルカに聞きたいことがあったので質問をしました。
「あなたの甥と、ぼくたちの共通点はなんですか」と、尋ねるとイルカは、
「それはね、海が汚くなってきていることが、原因なんだ。」
と言いました。それを、聞いてタンとジュンは、自分たちの兄弟が生まれなかったのも海の汚れだったことを、思い出しました。
イルカは、
「海はね、昔はガラスのようにすみきったものだったのに、いまではその面影すらない」と、さびしそうに言いました。
タンと、シュンは、これ以上聞いては悪いなあと思い、
「お世話になりました、さようなら」
と言いました。するとイルカは、
「体に気をつけてなあ、さようなら」
と言いタンは、次の目的地を目指して出発しました。

4、タコの岩場

タンたちは、イルカの海からタコの岩場へと、移動していました。
「ジュン、タコの岩場ってまだなのか」
と、タンが聞くとジュンは、
「もうすぐだと思うけど、あっ、タンあそこだよー」
と言いましたが、そこは行き止まりで、その上に大きな建物が建っていました。タンは、
「ジュン、ふざけていないで早く行こう」
と言いましたが、ジュンには、いまひとつわけがわかりません・そこで、ジュンは通りかかった、タコの一家にきいてみることにしました。
「すいません、タコの岩場ってどこにあるんですか」
と、ジュンが聞くとタコの一家は、
「ああ、前はそこにあったんだけどね、土が上からふってきてうまってしまったんだ。しかも、そのあとに建物が建つからめいわくしているよ」
と言いました。タンが、
「もっと、くわしく聞かせてください。」
と言うと、タコの一家は
「いいよ、新しいタコの岩場にタコの中で一番長生きな、おばあさんがいるからそのひとに聞いてごらん」
と言ってくれ、タンとジュンはタコの一家につれられ、となりの新しいタコの岩場に向かいました。
新しいタコの岩場についたタンたちを待っていたのは、年をとったタコのおばあさんでした。
「あんたたちかい、わたしの話を聞きたいのは、」
と、おばあさんが言うとタンとジュンは、
「はいそうです」
と言った。すると、おばあさんは
「じやあ始めるよ」
と言い話をし始めた。
「わたしが、子供の時のことだったよ。その日はみんなで岩場で遊んでいたんだけどね。変な生き物が海岸でうろちょろしていてね。わたしはなにかおこる気がして、親に知らせにいったんだよ。そして、かえってきたら岩場がないじゃないか。あたまがこんらんしたよ。でも、そこにいた全員が助かってほっとした。そして、しばらくたつとそこに建物を建てたんだ。くやしかった、しかも、そこだけじゃなくてどんどん私たちのすみかをうばっていく。もうやめてほしいよね、さあこれでおわりさ」
とおばあさんは言い、タンたちにつかれたからでていってくれといい、岩場のおくにひっこみました。その時タンは、あることにきがつきました。タコのおばあさんの目からなみだが、でていたようなきがしたのです。でも、ジュンが、
「タン行こう、次はカニの浜辺だよ」
と言ってきたので、タコの岩場をあとにしました。

5、子ガニの浜辺

タンたちは次の目的地のカニの浜辺を、目ざして進んでいました。すると、あることにジュンはきがつきました。
「なあ、タンだんだんよごれが、強くなってきてないか」
ジュンが言うとタンは、
「そう、言われてみればそうかもしれない」といいました。ジュンは
「それにタンあれ見てよ」
と言った。ジュンの行った方向には、なんと黒い油でおおわれた海岸がありました。そして、その海岸のちかくの海では子ガニが、遊んでいました。タンは、その子ガニに、浜辺がなぜあんなことになっているのかを、聞いてみることにしました。
「ねえ、君なんであそこの海岸は、あんなに油がたまっていて、汚いの」
とタンが聞くと子ガニは
「数年まえから、汚れがたまってきているんです、それに油は黒色で太陽の光をあつめやすいからろくに、海岸にでられません。誰か何とかしてくださいよ。」
と、子ガニは言いました。
ですが、タンたちにはなにもできません。そこでタンたちは、ウナギのおじいさんの所に戻ることにしました。
ウナギのおじいさんは、タンたちに
「旅は、どうだったかい。」
と聞きました。すると、タンは、
「苦しんで、いたのはぼくたちだけではありませんでした。」
と言いました。するとジュンは、
「なかには、涙をながしていた魚もいました。」
と言いました。
ウナギのおじいさんは、
「そうだったか、たくさんのことを勉強したね。」
と言いました。
タンは、
「みんなは、すべての生き物が海から生まれたことを、
忘れているんだ。海がなかったら今の自分たちもいな
かった。」
と言いました。
「みんなで海を大切にしなければいけないんだ。海は、すべての生物のお母さんみたいなものなんだ。みんな、目を覚まさなければいけないんだ。」
ジュンがさけびました。
このことをすべての生き物に伝えるためにタンとジュ
ンの旅がまた始まりました。

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