第六回島清ジュニア文芸賞「散文賞」(中学生の部)「夏と空と自転車と」その1

ページ番号1002727  更新日 2022年2月15日

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美川中学校一年 居村理美

月がある。私の真上に。花がある。真っ白な花。私が見上げた場所に。

2つの自転車が坂を上っている。
「ミキー。アイス食いたいんだけど。」
息を切らしながら私に話しかけてくるのは私の友人のあずみ。
「ムリ。今日金ないし。つーか一人で買え。」
息を切らして返事をする。あーもーこの坂長すぎる。七〇mくらいあると思う。長ェ!!
「それはなんかやだ。虚しい。」
「あっそ。じゃぁ──・・・。」
今やっと坂の上に到着。セミの鳴き声が遠くから聞こえる。日差しがまぶしい。
そんな、夏の昼下がりに私は存在している。
「じゃあ、おごって。金あるっしょ。」
「イーヤーダーネー。ミキにはおごらん。」
「ちェ───。」と私がぼやいた瞬間に、グラリ
と体がバランスを崩した。そのままアスファルトの上に自転車ごと倒れる。────────かと思ったら、フワッとした感覚。
「ここどこ?」なにもない世界にいる。
私、浮いてる?周りは夜みたいに暗い。ふと空(と思われる方角)を見ていると三日月がある。その下は───。
あれは木───?白い花が咲いてる。
その木を見ると不思議な気分になった。
あぁ私は会いに行くんだ。でもだれに?
分からない。でも絶対に会わなくちゃいけない気がするから。そう、会わなくちゃ。
そして私はその木に近づいていった。

「───ミキ!大丈夫?」
気が付くとさっきの風景は消えてて、いつもの坂の上の景色。アレ?月は?木は?
あずみがのぞきこんでる。
「ねぇ私って今ここに倒れてたの?」
「うん。てか音もなく倒れるからびっくりしたよ。ふつうならけっこう派手な音たてると思うけど。」
「ふぅん・・・。」
あれなんだったんだろ。夢?それにしてはリアルすぎたような・・・・?
((それはあなたの心の中だからだよ))
「ァェ!?」
突然頭の中で声がした。あずみの声じゃない。でも確かに分かったことはだれか女の子の声。聞いたことのない女の子の声。誰?
「ミ、ミキ・・・大丈夫?頭打ったんじゃない・・?」
あずみが怪訝そうな顔をしている。
「えっ!?あっいや、別に!!ウン、大丈夫!!大丈夫だから!!」
うわー恥ずかしい。でも声が聞こえたなんて言ったらマジで病院につれていかれる。
「はぁ───。何だったんだろうな・・・。」
そう言って私はまた自転車をこぎだした。
「ふぅ───。夜になっても暑いなぁ。」
そう言って最中アイスをほおばる。冷たいバニラの味が口に広がる。今の一口で完食。
横に置いてあるラジオからはノリの良いポップスが流れている。
私は今、自分の部屋のベッドの上。
時計を見ると深夜一時をまわってる。
「そろそろ寝るかな・・・・。」
私は立ち上がって電気とラジオを消した。
ベッドにもぐりこむ。
『あ、アイス食ったけど歯みがいてない。まぁいいかな。うん。』
そんな事を思いながら今まさに眠りにつこうとした。
今日の事も忘れて。

ザァッと一陣の風が吹いた。
アレ?ここは?もしかして昼に見たあの場所じゃない?今度は地面に足で立っている。でもあれ・・・?ん?何か・・・?
一つ違う所がある。
あの木に誰か座ってる。誰だろう。
私はまたあの木に近づいていった。
女の子?とっさに思ったコト。姿が全部見えた訳でもないのにそう感じた。
一歩ずつその木に近づいていって、ついに木の真下に来た。
私は急に不安になった。
なにも怖い事なんてないのに変な感じ。
ただこの子に会うと今までの『満たされたようで退屈な日常』が無くなるような気がして不安で不安で仕方がなかった。
((でもそれがあなたの願望なんでしょう?))
私はどきっとした。またあの声が聞こえたからでもあるけど、私が今まで隠してきた思いをずばり言い当てられたからだ。
何で?今まで必死に隠し通して来たのに。絶対に気付かれたくなかったのに。私は急に泣きたくなった。
嫌だ。 嫌だ。 嫌だ。
みんな気付かないで。私の心に入らないで。やめて。私に何も望まないで。お願い・・・やめてよ・・・・!!
「イヤァァァァァァ!!」
私は頭抱えてその場にうずくまった。涙がこぼれる。私に近づかないで。何人たりとも。ふるえが止まらない。怖い。怖い。
「大丈夫だよ。」
私の頭の上で声がした。私はハッとして頭を上げた。私の前に女の子が立っている。
「あなたの心には誰も入ってこないよ。あなたはとても美しいから。大丈夫だよ。」
「え・・・?」
彼女はとても優しい笑顔を私に向けていた。
「ほら、あなたの心の影はもうじきなくなるよ。きっと。きっと・・・。」
ぶわっと白い花弁が上からふってきた。
この子の言葉は私の中の汚いモノをとかしてくれたような気がした。氷がなくなるように緩く、柔らかく。
「・・・・・うわぁ──ん。」
私はまた泣き出してしまった。もう中学生なのに。でもさっき泣いた時とは全く違う気分だった。今はとても安心感に包まれている。
私の前に立っていたあの子は、子供みたいわんわん泣いてる私を弱く抱きしめてくれた。
まるで母が子をあやすように。優しく抱きしめてくれた。弱く・・・弱く・・・。
ざぁっと一陣の風が吹いた。

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