暁烏敏賞 昭和62年第2部門本文「中学校の生徒指導におけるある試み」2

ページ番号1002667  更新日 2022年2月15日

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第3回暁烏敏賞入選論文

第2部門:【青少年の健全育成に関する論文または実践記録・提言】

3、再建運動が目指しているもの

私は「喫煙・校内暴力等生徒の問題行動が多発化し、公然化したのは、教師不信が原因である。」と述べた。しかしこのことは、裏を返せば、「教師の信頼を回復させれば、それらの問題行動が克服できると同時に、豊かな心を持った生徒の育成も可能となる。」ことを暗示している。
また私は、「教師間の生徒指導観の違いが表面化して、教師に対する信頼は失墜した。」と論じた。これはまた、裏を返せば「生徒指導観を教師間で一致させるように図れば、生徒父母からの信頼を回復させることができる。」ことを意味している。
さらに私は、新聞・テレビ等マスコ・、の影響が少からずあったことを述べたが、これもまた、マスコミが好意的な反応を示すようになれば、生徒・父母は一層の信頼を教師に寄せる可能性を示唆している。
つまり私は、再建運動を展開して、教師間に横たわっている生徒指導観の差異を縮め、生徒・父母からの「教師に対する信頼感」を高めようとしている。また、そうして築かれた信頼関係の中で、生徒にもそれを推進させ、生徒間における友情の紳を強め、豊かな心を形成して、問題行動の起こらない平和で楽しい学校生活を送らせるよう試みている。
さらに私は、生徒が自発的に再建運動を推進し、友情の絆を強め、豊かな心を形成して問題行動の起こらない平和で楽しい学校をつくり上げた実践を各種教育関係誌・新聞等に発表し、問題行動多発化の中で失いかけた生徒・父母からの信頼回復に努めている。
以上のことから、私が再建運動を主宰し、目指していることを次のように整理できる。

  1. 学年主任として、本学年教師間の生徒指導観の差異を無に近づける努力をし、教師−生徒・父母間の信頼関係を厚くする。
  2. 生徒間の結束力を強め、互いに切磋琢磨し合いながら、生徒一人ひとりが豊かな心を形成する生徒集団を育成する。
  3. 2のような生徒を育成するために、学年教師間で一致させてきた生徒指導観及びそれに基づいた指導実践の理論化を図り、それが一般化されるよう努力する。

4、実践の展開

58年度に起こした再建運動を私は、59年度第1学年主任、60年度第2学年主任、61年度第3学年主任、62年度第1学年主任として、その先頭に立ち、5年間継続してきた。
しかし、この5年間に展開された再建運動つまり、(a)学年教師間の生徒指導観一致の努力、(b)生徒一人ひとりが豊かな心を形成し、結束し合っていく姿、(c)生徒指導観及び生徒指導法(実践)の理論化を図った研究論文集の内容や一般化を図った各種生徒指導研究発表大会での発表内容等、以上の三点を全て紹介することは、その量の膨大な事から不可能である。
そこで、58年度の実践に関しては、「2、再建運動の起こり」の中で紹介した「学年再建運動に立ちあがった生徒集団」をそれに替え59年度〜61年度の実践については「卒業文集再建運動と取り組んで」をもって紹介する。
そしてまた、62年度の実践に関しては、現在進行中であるが、私が原稿を書いた学年便りをもって紹介したいと思う。なぜならば、それらの文章からは、本学年教師が一致させようとしてきた生徒指導観や生徒が協力し合って学校生活を送り、豊かな心を身に付けている様が浮き彫りにされていると思うからである。

資料:卒業文集再建運動と取り組んで1

資料:卒業文集再建運動と取り組んで2


資料:卒業文集再建運動と取り組んで3

資料:卒業文集再建運動と取り組んで4


資料:卒業文集再建運動と取り組んで5

資料:卒業文集再建運動と取り組んで6

5、まとめ

転入生のA子が卒業間際の昭和62年3月9日の学級指導の時間、修学旅行(5月に実施されたため11月転入のA子は不参加)で収録したビデオテープを生徒に見せ、「思い出を語る会」を行った。
ビデオから流れる生徒の表情は底抜けに明るく、朗らかな笑い声が教室中に響いていた。このビデオを見ていたA子は、自嘲気味に笑いながら「私の修学旅行は、高いお金を払っていじめられに行ったようなものだ。」とポツリともらした。
私は身につまされる思いがした。一度学校の秩序が乱れ、授業撹乱、喫煙、暴力等問題行動の多発化、公然化の兆しが現れれば、第二のA子はあちこちに出現する。だからこそ、それを防ぐために私は「再建運動」を主宰し、5年間も続けてきだ。
そして、そのおかげで他校でいじめられ、悩み抜いたA子を、「毎日充実した学校生活が送れ、こんなに楽しくて、みんなと仲良くできる」ように受け入れることができた。
私は、この再建運動を展開し、A子のようないじめられる側の生徒も、かって本校で平然と暴力・校舎破壊等問題行動を起こしていたようないじめる側の生徒も、みんな仲良く生活できる学校づくりを試みている。そしてその結果、それを実現させるためには、

  1. いじめられる側の生徒の意識を高め、いじめられても泣き寝入りしないという強い気持を抱かせる。
  2. いじめる側(問題行動を起こしがち)の生徒の心を豊かにし、「そうした行動はバカらしい」という意識を抱かせる。という二点が大切なことは無論であるが、
  3. 一般生徒の自覚も高め、皆が仲良く学校生活を送るためには「いじめ・校舎破壊等問題行動を起こす生徒を出さないことが最低条件である」旨の意識を全生徒に身に付けさせる

重要性を改めて認識した。
そしてまた、勉強のできる生徒もできない生徒も、腕力の強い生徒も弱い生徒も、スポーツや芸術の好きな生徒も嫌いな生徒も、皆が仲良く学校生活を送るために、

  1. できないからといっても、ひがみ、嫉妬心等劣等感にまどわされない心を持つ。
  2. できるからといって、くだらない優越感を友人に対して抱かない。

というように、生徒自身に自分の気持を抑えさせる指導が重要であった。
この「自分自身の気持を抑えて、皆と仲良く学校生活を送る。」という努力が大切な事は、何も生徒ばかりに限ったことではない。我々学年教師集団は、それぞれ年齢、性別、身体的特徴、専門教科も違えば、趣味、支持政党思想信条等も異っている。
だから、生徒以上にその努力は必要とされるのである。
また、教師集団が仲良く、意欲を持って生徒指導の実践にあたるためには、単に「自分自身を抑える」という考え方で留まるのではなく、教師一人ひとりが抱いている主義主張や思想信条を反映させた生徒指導観の確立と、それに基づいた生徒指導実践が展開されなければならない。
私は、「再建運動」という試みを通して、教師一人ひとりが抱いている主義主張や思想信条を超えた1全ての教師の意思が反映する一生徒指導観の確立をめざして、生徒指導を行ってきた。これは、取りも直さず、教師-生徒・父母間の信頼関係を築き上げ、豊かな心を持った仲の良い生徒集団を育成する教師集団(生徒指導体制)づくりそのものとなっている。

資料:再建運動生徒論文集1

資料:再建運動生徒論文集2


資料:再建運動生徒論文集3

資料:再建運動生徒論文集4

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