暁烏敏賞 昭和63年第2部門本文「青少年健全育成活動の在り方」3
第4回暁烏敏賞入選論文
第2部門:【青少年の健全育成に関する論文または実践記録・提言】
第4章 健全育成対策への提言
※ 行政機構の改善
青少年の健全育成対策は、国では総理府で地方では知事部局で直轄している。これは青少年健全育成対策が、文部、厚生、司法、環境等、青少年の育成にかかわる全ての省庁の連係・統合の理念と、国家的見地からみた重要性の認識のうえに立っているからである。しかし、地域における活動はばらばらで単発的、そこには連係・統合の理念が生きていないのが実態である。もっとも致命的なのは、地域の行事や活動が、主役であるべき青少年の関心や参加が少ないことである。
このような結果となることは、急激に変化している青少年の心情が理解し切れないことから、地域における青少年対策会議において本音で協議がされないために、実態に即さない形式的なものとなってしまうからである。
この問題解決のために次の課題を提起する。
専門調査研究部の設置
国及び都道府県においては、専門調査研究部を設置して、関係部課の持つ資料、関係機関及び学識経験者の資料の収集、必要な調査等により、青少年の実態を総合的、有機的に把握することと、家庭、学校、社会、職場など、青少年を取り巻く環境診断を行ない、青少年対策地図を作り、適切な対策が講じられるようにする必要がある。
市町村にコーデネーターを配置
青少年健全育成の最前線は市町村である。したがって実践に伴う企画と指導力が切望される。
しかし現状は、地域の実態、地域のニーズから発案される活動に乏しく、都道府県の指導案に添った従属的なものに偏っている。その結果、活動が形式的で活力に乏しく、主役である青少年にとって魅力に乏しいものとなりがちである。
市町村の健全育成活動が青少年に魅力のあるものとするためには、地域の実態の把握と、青少年の心情に即した企画ができること、さらに関係機関の有機的連係、関係者の学習、保護者の相談指導などについて専門性をもった立場から指導できるコーデネーターを配置することが必要である。
コーデネーターは市町村において基礎的学識をもつ有能な人材を選抜し、都道府県で養成研修を行なうことと、必要に応じて継続的な情報交換、集団カウンセリングの場をつくり指導・援助を行なうものとする。
幼児教育機関及び学校に家族カウンセラーの配置
人格形成期にある子どもにとって家族環境は最も重要である。
この家族環境を健全に育成するためには、現代社会環境のなかで揺れている保護者にたいして、十分な相談サービスを行なう必要がある。
現在、青少年の相談機関は地域の児童相談所、教育センター、医療機関、精神衛生センタi等多数あり、カウンセラーには不足しないように見えている。しかしカウンセリングは法規や制度に照らして行なわれる行政的は相談だけではなく、人間的な面の相談が主体である。
相談に来る人達の心理として、公的機関に相談を求める場合には相当の措置を求める等、差し迫った問題に偏りがちとなり、そのため早期の相談に欠ける傾向があり、処理機関的な意識が伴いやすいので、機関としても真のカウンセリングがしにくくなっている。
最近の公的機関のなかにも、専門的なカウンセリングを求めて来談に来る人達も増えてはいるが、それは機関に来るのではなく、専門職員個人に相談を求めてくるものである。健全な育成を願う相談は、早期に、教育的に行なわれなければならない。また相談は信頼関係のうえにたって継続的に行なわれる必要がある。なぜならば、カウンセリングは来談者の成長により問題解決を図るものであるからである。
さらに、親子関係にかかわる相談は、子どもの生活行動が常に見えていている者が行なうことが望ましい。
親の語る子どもの姿は、その親のニiズによって歪められ、客観的、理性的に受け止めることができなくなっている場合が多いので、カウンセラーの正しい判断資料としての適性に欠ける危険性があるからである。
このような理由から、子どもの養育に不安をもっている多くの保護者にたいして、早期から信頼関係のなかで継続的な相談ができるカウンセラーを、幼児教育機関、義務教育機関に配置することが必要である。
義務教育学校では既に生徒指導を配置して生徒の相談指導に当たっているが、子どもにとってもっとも影響力の大きい保護者のカウンセリングにまでは至っていないのが一般的な状況である。
子どものもつ問題のかなりな部分は、親子の関係のなかから
理解し関係の改善を図らないと、子どもだけにスポットを当てても、核心に触れたカウンセリングとはならないことが多いので、一層の体制の強化が必要となる。
保育園・幼稚園の段階では、保護者自身が親の役割を果たすことに未成熟であったり、経験不足からの不安や混乱に落ち込んでいるものが多いので、保護者に対する相談指導は欠かせないものと理解する必要がある。
しかし、クラス担当も比較的に若い保母が当たる場合が多いので、親のカウンセリングは負担が大きすぎ、受容し切れない場面が出てくるので、クラスをもたない主任級か、園長がこの役割を果たすことが必要である。
幼児教育機関にカウンセリングの機能を整備するためには、保母養成機関の教育のなかにカウンセリングの講座をつくることと、当面の体制としては、対象者に専門研修を}定の期間継続的に行うことが必要となる。
児童福祉施設等の活用
子どもにとって成育環境が健全な成長を阻害する加害者となっているときがある。このような場合には早期に発見し、児童福祉施設等に保護することが必要となる。
また、家庭の養育機能が低下しているので、家庭教育が難しい時期に当面して保護者が困惑しているときなどは、適切で必要な期間施設の利用が計れるようにする必要がある。従来児童福祉施設は、保護者が居ないか、居ないに等しい状況にある場合のみに限られていた向きがあったが、家庭養育の補完と社会的連帯責任の時代となってきたこれからは、子どもの健全育成に児童福祉施設も積極的に役割を果たしていく時代が到来していると考える必要がある。
これからの児童福祉施設は、保護者のニーズを大切にし、利用施設的な性格を持たせていく必要がある。
そのためには必要経費の保護者負担制度を導入し、責任の自覚のうえにたって施設を利用できるようにする。
利用できる期間は必要最少期間とし、親子離れが生じないように配慮する。
このことを受けて立つ施設は、児童の健全育成の目的を十分に踏まえ、これに応えられる処遇と、専門技術の向上に努力する必要がある。
これからの児童福祉施設は、特別な要保護児童対策だけではなく、家庭養育を代替えする施設として、健全育成活動に積極的に参加していくべきである。
なお施設は、児童養育の長い経験と専門性のうえから、地域における児童育成の良きコーデネーターとしての役割も果たしていく必要がある。
以上の対策が、新しい理念のうえにたち、地域において機能的に統合・分化された活動ができたとき、時代を担う青少年の育成に成果を挙げることができるものと考える。
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