暁烏敏賞 平成5年第2部門本文「わんぱくオリンピック 手を通して心を学ぶ」1

ページ番号1002635  更新日 2022年2月15日

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第9回暁烏敏賞入選論文

第2部門:【青少年の健全育成に関する論文または実践記録・提言】

  • 論文題名 わんぱくオリンピック 手を通して心を学ぶ
  • 氏名 松吉久美子
  • 年齢 32歳
  • 住所 愛知県一宮市
  • 職業 指導員

1、学童保育所

私は学童保育所の指導員です。指導員というのは、保母さんみたいなもので、学童保育所というのは、学童、つまり小学生のための保育園です。
学童保育所には、共働き、母子父子家庭、その他事情があって、下校時に留守になる家庭の子供たちが、通っています。
一般に学童保育所は小学三年生までとされていますが、一年から六年までの子供が通って来ています。
父母の仕事が終わるのは大体五時なので、私の学童保育所は六時まで、他の学童の早く閉まるところでも、五時半までは開いています。
下校時から六時まで、ある時はみんなで同じ遊びをし、ある時はそれぞれ好きなように過ごし、おやつを食べ、掃除をし、し宿題をじ、リズムをもって一日を過ごしています。
指導員はこうした一日の生活の中で、ある時は父母替わりになり、ある時は先生替わりになって、子供たちの身近に過ごします。その中で、いろいろなことに気付かされます。

2、指先が使えない

一昨年、クリスマス会の準備をしている時でした。何人かの子供たちと、折り紙で輪飾りを作っていたのですが、半数ほどの子、特に一、二年生の手つきがとてもおかしいことに気が付きました。
まず、折り紙を細い短冊に切ることができません。ハサミが紙に引っ掛かり、破れてしまいます。ハサミがなまくらなのかと思い、私の使っていた物を貸しても、それは変わりません。
それに、短冊に切った折り紙の先に、糊を付けることができません。糊の大半が下敷きの新聞紙につくのはまだ良い方で、中には糊が指先にのらず、爪や第二関節のあたりにくっついてしまう子もいます。
そして、紙をたわめて輪にすることができません。力の加減が分からずに破ったり、折ったりしてしまいます。
考えてもみなかったことなので、私は呆れ、しまいに怒り出し、一、二年生たちは、「もうお手伝いやめる。」と言い出す始末です。
この時から、子供たちの手の生活に気を配ることを始めました。そしてたくさんの異常が目に付き始めたのです。
プリントを配って、ホッチキスで綴じさせると、ホッチキスの針がつぶれるのはまだ良い方で、ホッチキスの頭をちゃんと押すことさえできない子がいます。
お弁当に持ってくるのはフォークとスプーンばかりで、箸を持ってこない子がいます。おやつにうどんを出してみると、案定、箸が使えません。
お弁当を包むナプキンや、袋の紐が結べない子がいます。鉢巻きを使ったゲームをやると、「結んで。」と言って来る子が、列を作ります。
これは大変だ、という思いが日増しに募ってきました。その時の一年生も、進学したばかりの一年生ではなく、あと三ケ月ほどで二年生になるという頃の一年生です。つまりこの一年間で、箸の持ち方も、リボン結びも、ハサミ・糊・ホッチキスの使い方も学ばなかったし、誰も気に止めて教えなかったということです。
確かに、これは学校で教えられることとは少し違います。かといって自然に習得するわけでもありません。私も、「教えて、やらせて。」と言って来る子には教えましたが、あとは放ったらかしで、注意して見ようともしませんでした。

3、最初の失敗

学童保育所では、月に一度父母会を開いています。その席では、父母のみなさんと、学童保育所の運営上の問題、経済的なへ問題や制度上の問題、また行事の企画について話し合いますが、指導員は今子供たちがどのように放課後を過ごしているかの報告をします。
私はその席で、子供たちが指先を使えないことを話し、協力をお願いしました。
そして指導員も、切ったり、貼ったり、綴じたり、結んだりということを、なるべく子供自身でやらせ、できなければ一々立ち止まって教えることにしました。けれどもこれは失敗でした。
子供たちの関心は、切った後の物、貼った後の物、綴じた後の物、きれいなちょうちょに結んだりボンの方にあるので、切ること、貼ること、結ぶことにはありません。それに遊びの最中に、教えられ、叱られ、繰り返し繰り返し練習させられることで、すっかりイライラを募らせてしまいました。そこで結局ポイと放り投げてしまうか、適当にお茶を濁してこの場はすませようとします。だから次の機会にやらせてみると、また最初から同じことを教えなければなりません。つまり全く身につかないわけです。子供たちは、こんなことを学童保育所と家庭の両方でやらされたのですから、すっかりうんざりしてしまいました。
これはまた、父母や指導員にも言えることです。同じことを何度も何度も教えねばならず、何度教えても覚えないのですから、すっかりうんざりしてしまい、怒鳴り散らすようになってしまいました。
なんとか切ること、貼ること、綴じること、結ぶことそれ自体に興味を感じ、集中するようにしなけれなりません。わんぱくオリンピックというのは、そのために考えた企画です。九三年度で二回目になります。
指導員は研修会で教えられたり、必要に迫られたり、思いついたりと、あれこれ企画は立てますが、二年に渡って続くというのは、子供がそれを気に入り、受け入れたということですから、しめしめうまくいった、大成功というわけです。

4、わんぱくオリンピック

わんぱくオリンピックは、生活オリンピックです。種目は、九二年度と九三年度では多少違います。九二年度は、腕相撲、ほうき指のせ、リボンピック、はしンピック、ホッチキスパチン。予定では、ハサミでジョキジョキと、ほうきホッケーもやるつもりでしたが、時間をオーバーしてしまい、打ち切らざるを得ませんでした。
九三年度の種目は、腕相撲、ほうき指のせ、リボンピック、はしンピ・ック、かけっこです。
ホッチキスパチンをやめたのは、九二年度のオリンピックで、ホッチキスを、一つだけ残して、全部壊してしまったからです。
「何でも壊せば買ってもらえると思ったら大間違い。半分はわざと壊したようなものだもの。不便でもしょうがないわ。使いたい時には、指導員に言いにきなさい。私達のを貸してあげるから。」
これもまた別の教育的配慮というわけです。
わんぱくオリンピックは、ヨーイ、ドンで行う競争形式で、誰もが賞をもらえるというものではありません。賞は、金銀銅の、メダルは無理ですから、カードを出すことにしました。そして指導員は練習の時、「誰が金メダルを取るかな。」とあおり立てていました。もちろん、私達指導員の狙いは、この練習にあるのですが、子供たちは一ケ月先の本番に手にできるかもしれない栄光、チラチラしている金銀銅メダルカードに夢中になって、、練習を始めました。
練習は、四、五、六年生が一、二、三年生を教えるという形式にしたので、以前のように二人の指導員が全部の子供たちの面倒を見て回る必要がなくなりました。それだけ練習にゆとりと時間を手に入れることができました。
また、子供たちにはこうも言いました。「全部が全部うまくなる必要はないんだよ。一つでも得意な種目を作って、それで入賞を狙ってごらん。」
何か一つをマスターできれば、後は大体同じような指先の技術だから、日常の生活の中でゆっくり身につけてゆけるだろう、と考えたからです。
さて、練習に明け暮れた一ヶ月が終わり、わんぱくオリンピックの開幕です。

5、腕相撲

九二年度も九三年度も、オープニングは腕相撲でした腕相撲を選んだことに理由はありません。これは景気付けの種目です。これは誰もが知っています。といっても九三年度は二人の一年生が「こんなの初めて、どうずればいいの。」と驚いていましたが、その際も単純な力比べですから、込み入った説明はいりません。
まだ何事にも自信なさそうにウロウロしている一年生も、一気に勝負に引き込まれます。「ぼくは絶対ゆうほ君に勝てるよ。」「ゆきちゃんが相手なら、かるんかるん。(軽い軽いと言いたい)」と顔を真っ赤にし、まず口先相撲で勝負です。
まあ、百聞は一見にしかず、説明のいる一年生は後回しにして、上級生の取り組みから始まります。九三年度の上級生の腕相撲は、金銀銅メダルを女子が独占して、低学年の子供たちをすっかり興奮させました。この勢いをかりて、はしンピックに突入です。

6、はしンピック

はしンピックというのは、箸の競争です。狙いはもちろん、箸を自在に使えるようにすることです。
競技は、まず各々が茶碗と箸を用意します。テーブルの真ん中には皿があり、一年生のためにポップコーン、二年生以上のためには、うずら豆が盛られています。ヨーイ、ドンで、一年生はポップコーン、二年生以上はうずら豆を、箸でつまんで自分の茶碗に入れてゆきます。すくい上げたり、流し込んだりするのは違反です。制限時間は一分。
九三年度は九二年度に比べて、上位陣の成績は奮いませんでしたが、各々が九二年度の成績を上回る成績を残しています。
何より二年目の九三年度は、九二年度に比べて練習時間ははるかに短くすみました。二年生以上の子供たちが、みな前年度で箸の使い方を学び、後は三度の御飯のたびに練習していたからです。こうして一度身につけてしまえば、それぞれの記録には、それ程大きな差は見られません。

1年生 記録
順位 92年度 93年度
金メダル 40コ 42コ
銀メダル 35コ 41コ
銅メダル 33コ 38コ
2、3年生 記録
順位 92年度 93年度
金メダル 27コ 19コ
銀メダル 21コ(2名) 17コ
銅メダル 21コ(2名) 16コ
上級生 記録
順位 92年度 93年度
金メダル 34コ 38コ
銀メダル 31コ 27コ
銅メダル 30コ 26コ

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