暁烏敏賞 平成9年第1部門梗概「日本の芸道に含む感性とモラル」

ページ番号1002599  更新日 2022年2月15日

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写真:暁烏敏像

第13回暁烏敏賞入選論文梗概

第1部門:【哲学・思想に関する論文】

  • 論文題名 「日本の芸道に含む感性とモラル」
  • 氏名 室 弥太郎
  • 年齢 66歳
  • 住所 石川県金沢市在住
  • 職業 会社役員

論文概要

平安末期の藤原定家の歌道意識に由来すると考えられる多種多様な芸道は、文化的・芸術的価値を創造・再創造する表現者の自覚的実践的立場の強い反映と考えられます。それは道を究めようとする仏教の意識を背景として生じる悟道的悟りとも見ることができます。作品は内的な人格価値によって評価されるという伝統的な芸道意識の反映と見られるわけです。それは仏教によって媒介された、根源的・自覚的な汎律性というべきでしょう。

芸道における美意識は、汎神論的自然感情による美的自然主義として特徴づけられるでしょう。世阿弥は能芸美を自然の花にたとえ、その美しさを舞台の上に再現しようとし、花の美への感情移入的傾倒の反映が、序破急の理論を生み出し、芸道における感性は、その根源において、大自然の永遠なるモラルに深く合一するものとして序破急の理論を展開しました。侘び茶の世界においては、山居への願望が強く、西行や長明の純粋な隠者の美的実存心情に思いを寄せて、現実生活からの逃避によってムードを楽しむ美的観照的人間が出たわけですが、これは侘び茶に特有の美的自然主義の表現としての、根源的存在である大自然への回帰願望の充足と考えられます。

世阿弥は抑制の美として「せぬ所の面白さ」と説きましたが、この抑制の美的興趣は、平安中期以来尊重されてきた「余情美」と本質的に類似しています。侘び茶においては唐物に研を競う茶の湯に簡素化・草庵化への侘び茶の方向明示です。唐物と和物の置き合わせとしての対比の美意識は、一種の抑制の美意識であり、この美意識が抑制のモラルと不可分であります。この反立的対比の美意識が堺町衆の反骨のモラルと密接な関連をもっていることは、利休の大胆、奔放な生そのものが、何よりの裏付けになるといえるでしょう。

日本の伝統的美意識は、芸道における感性とモラルの強固な結びつきにおいて、きわめて独自な展開を示しているといえるでしょう。

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