暁烏敏賞 平成12年第2部門梗概「心の居場所としての保健室 その意味を探る」
第16回暁烏敏賞入選論文梗概
第2部門:【青少年の健全育成に関する論文または実践記録・提言】
- 論文題名 「心の居場所としての保健室 その意味を探る」
- 氏名 竹俣 由美子
- 年齢 41歳
- 住所 石川県金沢市在住
- 職業 養護教諭
論文概要
子供たちの暴力・殺人事件が連日報道され、教育の抱える問題の深さを改めて認識する。現在の学校教育制度になじめず、保健室登校と呼ばれている子供たちの存在こそが、現代社会への警告なのである。
筆者は体験から、子供たちが保健室に来る意味を、(1)心身的発達の過程を越えること(2)考える時間を持つこと(3)他人とのつながりをもつこと(4)他人との共感を体験すること、と捉えた。これらは、子供たちが健全に育つためには、どのような子供であっても大切なことである。しかし、子供たちが育っている現在の環境をみると、現代の大人たちの意識・感情・行為の総体であるともいえる「人環境」は良好なものとはいえない。
大人たちは子供たちをまるでロボットのように操り、他の子供より少しでも良い成績を上げることに心を奪われ、子供自身で考え、行動することを拒むという状況を作りだしている。それにより、子供たちの成長、発達が歪められ、子供たちはひきこもりや暴力という行為で本能的に自らを守っているのではないか。
今日の子供たちに欠けているのは、「人と人とのつながりある社会を構成する一員」である、との認識である。これは、子供たちが本来、人として持ち合わせているものであり、大人たちを含めた健全な社会から育まれるものであることを、大人たちは認識する必要がある。大人たちは子供たちの行為の意味を受け止め、健全に導く努力を惜しんではならないのである。
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