暁烏敏賞 平成16年第1部門梗概「地球時代によみがえるヘーゲルの市民社会論『ネオコンの論理』を超えて」

ページ番号1002564  更新日 2022年2月15日

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写真:暁烏敏像

第20回暁烏敏賞入選論文梗概

第1部門:【哲学・思想に関する論文】

写真:火焔様式楽人像

  • 論文題名 地球時代によみがえるヘーゲルの市民社会論 『ネオコンの論理』を超えて
  • 氏名 小川 仁志
  • 住所 愛知県名古屋市守山区在住
  • 職業 公務員

論文概要

近代国家を国家たらしめていた何らかの人為的な「力」が取り除かれるや否や、たちまちそこには、一民族一国家を求めて、カオスと化した民族の紛争が繰り広げられる。しかも、歴史の教訓から明らかなように、カオスは世界戦争に飛び火する危険性を秘めている。したがって、我々人類は、民族の興亡を仲裁する必要に迫られる。そして、そのためにはまた別の新たな「力」が求められるのである。『ネオコンの論理』の著者ロバート・ケーガンは、アメリカの軍事力こそまさにその「力」であると主張する。しかし、アメリカはあくまで一国家にすぎず、恣意性と責任という点で世界のすべてを任せるには問題がある。そこで、国連の「力」が求められてくる。

では、国連はいかにすれば『ネオコンの論理』に反駁し、「力」を発揮することができるのか。この点、ケーガンは、『ネオコンの論理』の背景に万人の闘争状態というホッブズ的世界観があるという。そして、アメリカが「主権者」よろしくふるまうことを正当化するのである。他方、カントの永久平和論を掲げて国連中心主義を唱えるヨーロッパのような国々は、理想主義のジレンマのなかで行き詰まりを見せている。たしかに、国際社会の現状に鑑みるならば、現実認識はホッブズの方が正しいであろう。しかし、理想はカントの方が正しいに決まっている。問題は、方法論である。

そこで、本稿では政治哲学的なアプローチとして、ホッブズでもカントでもなく、ヘーゲルの市民社会論を応用することで、国連が「力」を発揮するための理論を提示している。いまや地球自体が一つの市民社会となっているのだから、何らかのかたちで市民社会の論理が国際関係の枠組みにも適用できるはずである。カオスと化した民族の紛争が、再び大きな戦争の引き金になるようなことのないように、いま地球規模での市民社会の「力」が求められている。その一助として、ヘーゲルの市民社会論が新たな光を放ちつつ、時空を越えてよみがえるときがやってきたのである。

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