暁烏敏賞 平成20年第1部門梗概「今、独自的普遍(Universel Singulier)というあり方」

ページ番号1002541  更新日 2022年2月15日

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第24回暁烏敏賞入選論文

第1部門:【哲学・思想に関する論文】

写真:火焔様式楽人像

  • 論文題名 今、独自的普遍(Universel Singulier)というあり方
  • 氏名 南 コニー
  • 住所 京都市南区在住
  • 職業 神戸大学大学院後期博士課程

論文概要

本論ではフランスの実存主義者Jean-Paul Sartreの未完のモラル思想に於いて主要概念である「独自的普遍」をもとに我々と哲学の関係及び21世紀の生き方を考察する。

まず大概すると「独自的普遍」というのは人間の行動がある時代に条件付けられながらもその人間のもつ独自性を前面に出してゆくことで、人間が歴史の創造を担うことを意味する。しかしこのような実存思想は「人間中心主義の思想」あるいは構造主義に既に乗り越えられた哲学と思われているかもしれない。だがここでは実存思想がまず第一に「関係」の哲学であることをキェルケゴールをとりあげながら再検証すると共にサルトル、キェルケゴール両者の思想、社会参加、モラルの相関性を示すことでモラル相対主義、世界共通倫理の可能性とその問題点を検証する。

21世紀は情報化、グローバル化の時代でありさまざまな危機に直面している時代である。民主主義、独裁制、経済低迷、食糧難、宗教回帰、少子高齢化、移民規制、二極化社会、環境、メディア等の問題が身近で起きている中で我々は知らず知らずのうちに矮小化された情報に翻弄され、世界情勢や社会問題とのスタンスの取り方がわからなくなっているのではないだろうか。しかしこのような指標のない世界でこそ我々は多様性に基づいた判断をすることが求められるのである。21世紀を生きるということは、これらの問題を生きるということでもある。そこで重要になるのはそれらの問題を我々がどう理解し、どのような立場をとるかである。

まず我々に今最も必要なのは「問う」ことではないだろうか。我々は世界、社会、メディア、教育、時事、国政、他者、自己に対して常に問い続ける姿勢をもたなければならないだろう。このように全てのものを「問う」ことこそ、我々と哲学の関係でもあると思われる。だが我々は答えを「知る」ために問うのではなく答えを「生きる」ために問わなければならない。そしてこの「問いを生きる」ことこそが「独自的普遍」という生き方なのである。つまり与えられた情報を安易に信じるのではなく、自己の立場を明らかにして物事に対して自分なりのスタンスをもち、自己表明をしてゆくことで社会に参加するという姿勢である。我々一人一人が無関心の仮面を脱ぎ捨て、手を取り合って前に進みはじめたその瞬間から未来の展望が開けるのではないだろうか。

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