美川中(感性のびのび 心があたたまる話集)
第一話 成長
わたしは、幼い頃、友だちと毎日のように遊んでいました。毎日のようにケンカをし、しかし、翌日には仲直りしていました。
それに対して、中学校三年生の現在の自分は、もちろん友だちとはよく遊びますが、ケンカなどはめったにしません。それに、一度ケンカをしてしまえば、仲直りをするには時間がかかります。もしかしたら、こじらせれば永遠に仲違いしたままになるかもしれないと思うこともあります。
幼かった頃の自分と現在の自分とでは、体の大きさも違えば、感情表現のしかたも違います。「成長したな」と思える部分の方が多いのですが、「悪くなったな」と思ってしまう部分もあるのです。ささいなことでは争い合いにならない反面、物心がはっきりとついた——と言えば聞こえはいいのですが、実態は我が強くなったという感じの——今の自分には、「許す」ということがなかなかできなくなっています。そういうとき、わたしは、気負うことなく許容ができていた幼かった頃の自分に戻りたいと思います。
ですが、変化した今の自分を受け止め、見つめ直すことが大切だということもわかります。
自分のなかの良いものをもっと良い方向に持っていき、好きではない部分を少しずつ改善していきたいと思います。人生のなかで起こったこと、起こること、出会いと別れ、経験の全てがわたしを支えてくれています。その重みを感じ、糧とし、成長だと思えるような変化を重ねていきたい。大人になったとき、自分はどこをとっても成長したと感じられるようになっていたいのです。「今の自分が好きだ」と自信をもって言えるように。
第二話 小さな努力
数学の授業で、計算ドリルが全員に配られた。一枚のプリントには五問前後の計算問題が載っている。厚さはあるが、手のひらサイズの小さなドリルだ。
先生は、「一日一ページで良いので、学校で取り組んでください。」とわたしたちに言った。先生は、家に持ち帰らず学校での休み時間などの短い時間内にやってください、とも言った。そうすることによって、数学のテストにある基本問題が完璧になるはずだと。
わたしは、数学が五教科の中で最も苦手で、だから、これだけはがんばろうと決意した。
一日一ページずつ。
先生に言われたとおり、短い時間に進めていった。一ページには五問ほど。苦手だといっても三分もあればできる。そう思うと楽しくなった。しかし、周りの人たちは、その簡単なドリルもあまりやらなかった。
ドリルが配られてから三週間が経った。総合テストの日だ。一年から三年の前半までの範囲。国語や社会、英語はまずまずだった。しかし、理科と、苦手な数学は満足できる点数には達しなかった。今回のテストも数学が一番できなかった。
しかし、数学のテストは点数こそ悪かったものの、基本の問題はほぼできていた。それを見て、わたしは少しホッとした。
総合テストが終わったあとの数学の授業で、先生が「この前配ったドリルを一度点検します。」と言った。先生は一人ずつドリルを確認していった。けれどもみんなは少ししか進めておらず、中には一ページしかやっていない人もいた。先生はそれを見てとても残念がっていた。
でも、わたしのドリルを見て、先生はたいへん喜んだ。わたしは十九ページ進めていた。
一日一ページ。簡単に進められる。
わたしは、先生や周りの人たちからすごいとほめられ、とてもうれしかった。
この経験をとおして、わたしは、なにごとも努力することが大切だと感じた。それは、続けることで、努力と感じずに取り組むことができる。わたしは特別なことをしたわけではない。やると決めた小さなことを、毎日続けただけだ。けれど、それはわたしの誇りになった。
コツコツ続ける。
わたしはこれからも、小さな努力から始めようと思った。
第三話 ふと気づく
わたしは学校の給食が大好きだ。
一限目から四限目までがんばったわたしたちへのごほうびとも思える。また、午後の授業をがんばるための、エネルギーをもらえる。友達と語りながら食べるものは、格別においしい。
このような理由で、わたしは給食が好きだ。
しかし実は、もう一つ、給食の時間が好きな理由がある。それは、クラスみんなの思いやりや心遣いである。
四限目が終わると同時に、それぞれが給食の準備をする。中にはたまに、遊んでしまう人もいるが、ほとんどの人はやるべきことをやっている。すばやく机を班の形にし、手を洗いに行く。ワゴンを運ぶ係の人は、だれよりも速く動く。みんなに迷惑をかけないように、みんながすぐに準備に掛かれるようにとの気持ちからだ。
ワゴンが届くと、給食当番だけでなく、それ以外の人も手伝って配膳の準備をし、それぞれ自分の班の支度をする。
ここでわたしはふと気づいたのだ。たくさんの人が準備をしている。自分の仕事だからとか、そうではないからとか、そんなことを気にしている人はいないのではないかと。確かに、仕事を分担している給食当番や係の場合は、自分に割り振られた仕事をきちんとしようと考えている。それ以外の立場であったときのことだ。
配膳のセッティングをする。自分の班の準備が終わる。次は、他の班を手伝う。給食当番の班の給食をそろえる。
特別なことなんて、きっとだれも思っていない。ごく自然に行動している。「しなければいけない」とすら意識していないのかもしれない。
不備があったら、だれも何も言わなくても、みんなそれをカバーする。何かの理由で人数がそろっていないならば、みんながそっと待つ。
当然のようにしていることであるが、こういう行動はとても大切なことで、すごくやさしいことではないのだろうか。それぞれがそれぞれのことを考えて自然に行動し、それぞれがそれぞれのことを「ありがとう」と思う。このような小さなやさしさが積み重なってこそ、本当の優しい人間ができあがるのではないかと最近思う。
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