平成18年度入選作文(ジュニア部門1)「母の背中」

ページ番号1002691  更新日 2022年2月15日

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第22回暁烏敏賞入選作文(ジュニア部門)

写真:ジュニア盾

  • 作文題名 母の背中
  • 氏名 東 陽子
  • 住所 石川県白山市在住
  • 学年 白山市立美川中学校3年

「陽子、おはよう。」「お母さん、おはよう。」私の1日は、母との元気な挨拶で始まる。我が家の四人目の子供として、この世に生を受けた私は、母にとってきっと待ちに待った子供ではなかっただろうと思う。しかし、母は分け隔てなく、私達兄妹四人を大切に、愛情一杯に育ててくれた。

私が生れてすぐ、育児に協力的だった父が3年程単身赴任することになり、母の大変さは、想像を絶するものがある。末っ子の私の居場所といえば、いつも母の背中。何をするにも母は、私をおんぶしていた。私は、母の背中が大好きだった。温かくて、大きくて。年のそう離れていない私達四人は、いつも母を取り合い、自分だけの母にしたかった。私のすぐ上の姉は特にそうだったに違いない。姉も大好きだった母の背中を私が横取りしたようなものだから。とにかく、私達はいつも母と4対1の関係の毎日だった。それはそれで、自分の思い通りにならないという我慢を覚えることにつながり、自然に生きていく上でのルールを学んでいたのかもしれない。現に私達兄妹はとても辛抱強い。それでも、母は私達の心が満たされるようにと母と1対1の関係、つまり二人きりになれる時間を作ってくれた。それは何ヵ月に1回の割合で、四人が交代で母と出かけて二人きりの時間を過ごし、残りの三人は父や祖父母との時間を過ごした。父や祖父母との時間も楽しかったが、私達は母と二人きりで出かける日をとても楽しみにしていた。母を一人占めできる唯一の日なのだから—。

私の番がきたある日、二人で電車の旅に出かけた。各駅停車だったので、駅の名前や順番、そして漢字にも触れることができた。また、電車での旅は、いろいろな人との出会いがあり、たくさんの体験をすることができた。その日も、母と並んで座って話をしていたら、私の前に腰の曲がったおばあさんが一人で乗ってこられた。私は「席を譲った方がいいのかな。」と思い、母の顔を見上げると「席を譲ってあげたら。」と母の目も私にそう言っているように感じたので、ドキドキしたけど、「どうぞ」と言って立ち上がった。そのおばあさんは、「ご迷惑をおかけしてすみません、ありがとう。」と言って、ニッコリ笑って座ってくれた。なぜだか心は弾み、「やったぁ」という達成感で一杯になった。おばあさんの心に触れて「ありがとう。」の言葉が忘れられないものになった。いろいろな体験で、私は自分に少しだけ自信が持てるようになった。

今になって思えば、母は二人きりの時間を利用して、私達にたくさんの経験をさせ、机の上の勉強だけでは学べないたくさんの事を教えてくれたのだと思う。あの頃、幼くてよく理解できなかったけど、今、母の愛の深さを感じている。こうして、母と二人きりの時間は、私達をとても甘えん坊にして、そして成長させてくれる有意義なものとなった。私達のことを尊重し、大切に育んでくれた母にとても感謝している。

さらに、母は飛び切りの「ほめ上手」だ。私のやる事なす事、すべてをほめちぎり、その気にさせるのが上手だった。人間、ほめられて嫌な気持ちはしないものである。私はいつも母の飛び切りの笑顔にうまく乗せられてきた。そして、母にもっとほめてほしくって頑張ろうという意欲を持ち続けることができたように思う。「柔よく剛を制す」怒りよりも優しさの方が人を従順にしてしまう力を持っているようだ。母のねらいは、そこにあったのだろう。ほめ上手な母のおかげで、何の取りえのない私も、自信を持つことができた。そして、自分を好きになることもできた。私が落ち込んでやる気がない時には「成せば成る成さねば成らぬ何事も」と満面の笑みで励ましてくれる母だが、実は母も祖母からの受け売りだったらしい。そして祖母は曾祖母からと代々受け継がれているようだ。そういえば祖母も曾祖母もほめ上手だった。すでに亡くなった大好きだった曾祖母が、私の中にいるようで、とても感動的でうれしかった。伝えることのすばらしさと大切さを感じた。私も母から受け継いだバトンをしっかり次の世代に渡せるよう、頑張ろうと思う。

お世辞にも美人ではなく、スマートでもない母。純粋な心の持ち主で、素直に笑い、素直に泣く。私にとって世界でたった一人の母。違い過ぎるほど違う私達兄妹の個性を「みんな違って、みんないい」と私達を信頼してくれる母。笑いあり涙ありのこの毎日が、楽しく居心地がいいのは、きっと母のおかげだろう。恥ずかしくて、口にすることはできないけど、「お母さん、あなたの娘で本当によかった」

これからもずっと母の背中を見て生きていこう。大きくてあったかい背中を—。

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