平成21年度入選作文(ジュニア部門1)「大好きな母に」

ページ番号1002684  更新日 2022年2月15日

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第25回暁烏敏賞ジュニア部門入選作文(中高校生部門)

写真:ジュニア盾

  • 作文題名 大好きな母に
  • 氏名 裏 萌子
  • 住所 石川県能美市在住
  • 学年 石川県立金沢錦丘中学校 3年

私の母は膠原病患者です。母は今薬を手放せない状態です。寒い所に行くと、指が真っ白になったり、紫色になったりします。他にも多くの症状があります。

私が母の病気を知ったのは、中学一年生の時でした。以前から少しずつ薬を飲んでいたので、おかしいとは思ってはいました。しかし、改めて母の口から聞くと、思っていた以上に重大な事だと分かりました。母は、
「この病気は、治ることはないし、いつ死ぬかも分からん。ママのお母さんは、ママがあんたくらいの歳の時に死んだんや。これからは、もっと家の事とか手伝ってな。」
と言いました。私は、泣くことを我慢しようと思いましたが、母が話している途中から大泣きしてしまいました。最も近くにいる人が、死んでしまうかもしれないなんて、信じられませんでした。母は、大泣きする私を抱きしめてくれましたが、涙はなかなか止まりませんでした。翌朝、目を覚ますと母のぬくもりを感じられなくなっているかもしれないと思うと、その日の夜は眠れませんでした。中学三年生になった今でも、ふとした時に母の言った言葉を思い出し、気がつくと涙を流していることがあります。

その後、私は、少しでも母の助けになりたいと思い、姉と協力して家事を引き受ける事にしました。しかし、学校から帰ってくると、疲労や勉強の忙しさを理由に家事をしなくなることが多く、なかなか実践することが出来ませんでした。

そして私が中学二年生になった頃から、母は病院で働くようになりました。最初は、家族の中でも反対する意見がありました。しかし、母の働きたいという思いは強く、反対していた私も応援することにしました。病院には先生もいるから、もしもの時は頼れると思ったからです。こうして母が働き始め、私が学校から帰ってきても母が家で待っていることが少なくなっていきました。最初は寂しいという気持ちが溢れてきましたが、私もしっかりしなくてはと思い、母や姉に言われたことをこなすようになりました。そして母が帰ってくると、皆でご飯を食べました。仕事が長引くこともありました。その時は、姉と二人でご飯を食べました。母が食卓にいないということが今まで全然なかったので、最初は悲しみが姉と二人の食卓の雰囲気を重たくしていました。しかし、楽しく食べようと思い、話しをしてよく姉を笑わせるようになりました。

そんなある日、母から連絡がないに関わらず、なかなか帰って来ない事がありました。まさか…と思い、電話をしてみると母は、
「病院にお泊まりして、明日仕事が終わってから帰る。」
と言いました。お酒を飲んで少し酔った時の様な声でした。何回も、
「え?なんて?もう一回言って。」
と聞き直しました。その時、母は昼の薬を飲み忘れていたらしいです。もう薬なしでは、生きていけないくらいの状態まできているのだと理解しました。父が、
「もう仕事は辞めさせる。」
と言った事が何回もありました。私は、病気の進行の速さに驚きました。母が、少しずつだけれども、遠くに行ってしまう様な感覚に陥ることがあって怖かったです。

そんな中、母は今年、大学院を受験するために東京に行きました。私は、
「ママは落ちるな。」
などと捻くれた言葉ばかり言っていました。まさか、そこで母が救急車で病院に運ばれるとは思いもせずにです。東京の友達と昼飯を摂っている時に、急に震え出したかと思うと、意識を失ったと後で聞きました。父は、
「友達がいてくれて、本当に良かった。」
と言っていました。私は、その報告を聞いた瞬間、頭が真っ白になりそうでした。初めての感覚で自分自身驚きました。翌日に行われた受験の結果は、見事合格でした。でも、結局母は、研究テーマの変更を求められたため入学しませんでした。そして現在は、一生懸命に仕事を続けています。母は、心理士になりたいという夢を持っています。

自分の体がいつどうなるか分からない状況でも常に前向きに挑戦し続ける母に、今まで散々甘えさせてくれた母に、これから少しずつ恩返しをしていきたいです。そのために、自分のしたい事を少し我慢して家族に協力したいと思います。大好きな母のために。かけがえのない命のために。

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