平成19年度入選作文(ジュニア部門1)「ありがとう、お母さん」

ページ番号1002689  更新日 2022年2月15日

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第23回暁烏敏賞ジュニア部門入選作文(中高校生部門)

写真:ジュニア盾

  • 作文題名 ありがとう、お母さん
  • 氏名 福島 誠
  • 住所 石川県金沢市在住
  • 学年 北陸学院中学校 3年

「誠ならできる!がんばれ!!」
いつも私の背中を押してくれる母の言葉だ。私が、落ち込んでいるとき、自信をなくしかけたとき、母のその一言が魔法のように私の心を動かしてくれる。

母は私が五歳のときに離婚をし、一人で私をここまで育ててくれた。幼い頃から、父親のいない生活には全くといっても過言でないくらいに、不自由を感じていなかった。母はいつも黙って、母親と父親という二つの役割を背負っていたのかもしれない。

小学二年生のある日、
「誠、やるよ。」
そう言って家の奥にしまいこんであったグローブを取り出し、私にポンっと渡した。
「キャッチボールしよう。」
母はきょとんとする私を尻目に、どんどん歩いていった後姿がなんともたくましく、私の脳裏に焼きついている。近くの公園で、日が暮れるまでキャッチボールをした。母は、キャッチボールが思いのほか上手かった。女性なのにという偏見のようなくくりをしてはいけないのだと思うが、女性にしては上手かった。その頃、私のコントロールは正確でなく、ボールが常にあちらこちらへと飛んでいった。そのため、母は追いかけては捕り、捕っては投げる、そんなマラソンのようなキャッチボールを楽しんでいた。ボールがどんなに遠くへ飛んでいっても、
「あはは。」
と笑い、
「うまい、うまい、上手や。」
「ナイスボール。」
という声が公園に響き渡っていた。ボールを投げながら、
「学校、楽しい?」
「うん、楽しいよ。」
こんな言葉のキャッチボールも投球の合間にしていた。母は言葉のキャッチボールも上手かった。

そのうち、私は、近所の野球チームに所属するが、その腕はまったく上がる様子を見せず、やめてしまおうかという思いになることも度々あった。しかし、そんな私を励ますかのように、キャッチボールを続けてくれた。そんなキャッチボールも私の体がどんどん大きくなるにつれて、回数が減り、小学校五年生の頃には、いつの間にか途絶えてしまった。

ちょうど同じ頃、私は、反抗期であった。母とのキャッチボールがなんとなく頼りなく、また気恥ずかしいという年頃だったのかもしれない。母の言うことにも耳を傾けることもなく、なんでもないことにも腹を立て、キャッチボールはおろか、母の得意であった言葉のキャッチボールすら、母を困らせるような状態であったように思う。しかし、そんな私を母は、じっと我慢して、私を見守り続けていてくれた。

中学生になった私は、時々友人とグラウンドでキャッチボールをすることがある。私の投球フォームを見て、
「いいね。」
と通りかかる先生から声をかけられることがある。そんな時私は、なぜか無償にうれしく感じる。私の投球フォームは母とのキャッチボールから培ったものだ。母の
「うまい、うまい、ナイスボール!」
という声に後押しされる中で、生まれたフォーム。なぜか、
「いいね。」
という言葉に誇らしく胸を張る。

キャッチボールをする度に、母を感じる。ボールを捕る度に、母の温かさが伝わってくる。今、キャッチボールをする相手は、母ではないけれど、ふと、ボールを追いかける友人の姿が、母と重なることがある。ボールを受け取るときのジーンという震動は、友人の方がはるかに力強い手ごたえを感じる。しかし、母の投げたボールは力ではない手ごたえだったと、残像のように私の手のひらに、その感触が残っている。私は、いつまでもこの感触を手のひらに持ち続けていくことだろう。

今、私がここにいるのは、母のおかげだ。命を与えてくれたことはもちろんであるが、私の中に言葉や感触としての母の思いが溢れていることを感じる。この溢れる思いが、どんなときも私を勇気付け、励ましてくれる。

「誠ならできるよ。」
この言葉は、母の溢れる愛情を確かに感じている私には、薄っぺらな、適当な励ましの言葉ではない。確かな母の愛情なのだ。今、心から母に、
「ありがとう」
を伝えたい。
「ありがとう、お母さん。」
今、私はもう一度、母とキャッチボールをしてみたい気持ちになった。今度は、私が、眠っているグローブを母に渡してみようと思う。

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