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蕪城小

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部署名: 学校指導課 電話番号: 076-274-9578 FAX番号: 076-274-1665 E-mail: gakkoushidou@city.hakusan.lg.jp

 
 
第一話 突然現れたスパゲッティ

 ここ蕪城小学校二年生のクラスでは、お昼、こんな声が今日も響いています。
「今日も、ごはんおいしいね。」
「うん。私たちの学校の給食って、日本一おいしいかもね。」と。
 そうです。ここ蕪城小学校の給食は、栄養バランスはもちろん、カレー一つにしても何時間も小麦粉から炒めて作り上げた世界でただ一つの「蕪城小特製手作りカレー」が出てくるくらいすごいのです。
「次の時間の算数の勉強は難しいなあ。」と思っても、給食のメニュー表を見るだけで、子どもたちはモリモリ元気になってしまうのでした。
 さて今日も楽しみな給食の時間です。元気な子どもたちの声がします。
「今日はクリーム・スパゲッティとあるよ。うわあ、ベーコン、にんじん、たまねぎ、しめじにパセリ…そして卵。いろいろ入っていて、おいしそうやなあ。」
「生クリームにバターも入っているんだって。おいしそうやなあ。」
「わーい。みんな同じように分けてよ。かおりちゃん。」
 そして、おいしそうに盛られた給食。
「いただきます。」
「うわあ、すっごくおいしーい!」
「とろっとろ。おいしいなあ。」
 どの子もみんな笑顔一杯です。

 いよいよお代わりタイムとなりました。かおりさんの声が響きました。
「お代わり、ほしい人はいますか。」その声に、たくさん子が配膳台に集まりました。
 スパゲッティをよそう顔も、みんなみんな笑顔です。
 しばらくして、こんな会話が伊藤先生(仮名)に聞こえてきました。

彩乃「私の分、お代わりなくなっちゃった。」
宏美「彩ちゃん、いつも『お先にどうぞ。』って、みんなに言うもんね。」
 
 そんな言葉に、彩乃さんはだまってうなずきながらうつむいて自分の席に戻りました。そんなうつむいている彩乃さんに伊藤先生がどう声をかけようかと思っていると、愛さんの元気の良い声が響き渡りました。

愛「彩ちゃん、お代わりきてよ。クリーミー(?)・スパゲッティのお代わりあるよ!少しだけれどね。」と。

 なぜか彩乃さんが席に戻ってすぐ、突然、クリーム・スパゲッティが食缶に現れたのでした。彩乃さんを心配そうに見つめていた伊藤先生は、何が起こったのか分からずに、配膳台にいる愛さんを見ました。愛さんは食缶の中に突然現れたスパゲッティをよそいながら、彩乃さんを呼んでいます。
 そして彩乃さんは食器を両手で抱えて笑顔で配膳台に向かいます。愛さんは彩乃さんの茶碗を受け取り、クリーム・スパゲッティをよそったのでした。

愛「すこしだけれどね。」と。

 伊藤先生が見てみると、愛さんと彩乃さんはにこにこ顔、ふと周りを見渡すと、クラスのみんなもニコニコ顔になっているのでした。
 そんな様子に、先生も幸せいっぱい、ニコニコ笑顔です。先生は心の中で思いました。

「そう言えば『お先にどうぞ。』って言葉、久しぶりに聞いたわ。今は「我先に」「私が一番に」そんな言葉ばかりが言われる世の中。でも、彩乃さんのように『お先にどうぞ。』って、自分にとって大切な何かを人に分かち合おうとすることができたら人はどんな幸せになれることか。そして愛さん(きっと愛さんだと・・・)のように『お先にどうぞ。』って言ってくれた人に、愛情をお返ししようと人がしていったらどんなに世の中が幸せになっていけることか。そして、今のみんなのように、そんなやりとりに、みんなも幸せを感じ取れる世の中であったなら、どんなに幸福なことか。」と。

 突然現れた「クリーミー(?)・スパゲッティ」は、「幸せを運ぶスパゲッティ」にも思えた伊藤先生でした。

 「おいしい給食を、本当にごちそうさま。そしてありがとうね。みんな。」

  〜白山市立蕪城小学校のある日から〜

 
 
第二話 サクラソウが運んでくれた『希望』・『幸せ』

 今日も蕪城小学校の子どもたちは元気に集団登校してきます。
「おはようございます。」たくさんの子が片手に本バックを持っています。みんな、本を読むのが大好きです。吹き抜けのすごく広くて太陽の光がいっぱいさすメディアホールはもちろん、なんと言っても、そこにはみんなの大好きな図書館司書の北山先生が笑顔で迎えてくれるからです。先生が作ってくれた季節に合った本を紹介するコーナーも見ているだけでわくわくしますし、先生の読み聞かせも本当に楽しみなことの一つでした。
 そんな蕪城小学校に、今日も本バックをもった四年生の沙代さん(仮名)が元気に登校してきました。そして山本先生(仮名)に、こんな声をかけました。

「おはようございます。ねえ、山本先生は、何の花が好き?」
 先生は急な質問に戸惑ってしまいましたが、ちょうど頭に浮かんだのがタンポポの花でしたので、
「タンポポだよ。」と答えました。
 すると、沙代さんは、本バックから何やら本を写したであろう紙を取り出しました。
 そして
「えーとね。先生の大好きなタンポポの花言葉はね・・・、えっと、『べ・つ・り』ってあるよ。」と話し始めました。沙代さんは首をかしげながら、
「『べ・つ・り』って、どんな意味なのかな?先生、わかる?」と聞きます。
 先生は
「どうしたものか。沙代さんに悪いかな。」とも思いましたが、ここは正直に答えるべきかと思い、
「『べつり』って別れて離ればなれになることかなあ。」と答えました。
 すると、沙代さんはみるみる申し訳なさそうな暗い顔になるではありませんか。でも、すぐさま続けて 
「えーとね。先生。・・・・・・サクラソウは好き?」と言います。
「サクラソウ、大好きだよ。」と答えると
「サクラソウはね。確かね。『幸せ』だったと思うよ。・・・よかった。」
と笑顔で答え、安心したように沙代さんは教室に向かいました。

 さて、先生は家に帰ってから、ふと朝の会話を思い出して花言葉を調べてみました。
 するとびっくりです。サクラソウは『希望』、クローバーが『幸せ』とあるではありませんか。

「あー沙代さんは『別離』の意味を先生から聞いて、とっさに」
「山本先生、がっかりしないで。えっーと『幸せ』の花は何だっけ?」と、小さい胸を痛めながら必死に考えてくれたにちがいない。と。

 そして素敵な花言葉だった「サクラソウ」が頭の中で思い浮かび、とっさに先生に「サクラソウは好き?」と言ってくれたんだと。
 短い間に、いろいろと自分のことを気遣ってくれた沙代さんのことを思うと、山本先生はじんわりと胸が熱くなってくるのを感じました。

 先生は、夜、布団に入りながら、心の中でこうつぶやいていました。
「沙代さん。私はあなたから、確かに『幸せ』『希望』を受け取ったよ。ありがとう。沙代さんのような心遣いを言葉にすると『思いやり』っていうかもしれないね。沙代さんのような心を私も大事にしていくね。」と。

              〜白山市立蕪城小学校のある日から〜

 
 
第三話 鶴になった子ども

 四月、蕪城小学校も新学期を迎えました。ある日のこと。その日は春とは言え、冷たい雨が降る寒い日でした。ここ蕪城小学校では町ごとに集団で、頼もしい六年生が下級生をまとめながら登校してきます。とても風が強いところなので雨が降る日は一、二年生はカッパを着て登校することになっています。
 毎回、雨が降ると朝困ったことがありました。それは入学したての一年生の中でうまくカッパを脱げない子がいることでした。真新しいランドセルにカッパが引っかかって、バンザイ状態となってしまうのです。そうなると足をぴょんぴょん、体をバタバタさせてみるのですがなかなかカッパが抜けません。
 この日も、校長先生、教頭先生、一年生の先生方が玄関前に出ては、カッパを脱がせたり声をかけたりと大忙しです。

 集団登校も一段落した後、中田先生(仮名)が何気なくげた箱に目をやると、ある一年生がバンザイをして手をバタバタさせているのが目に入りました。それは健太(仮名)さんでした。やはりランドセルにカッパがひっかかって脱げなくなっているのでした。
 そして健太さんの横にはカッパの両腕を脱がせようと、必死になってひっぱっている女の子がいました。それは五年生の真琴(仮名)さんでした。中田先生は健太さんのもとへ駆け寄りました。そして、健太さんの近くまで来ると、隣にいる真琴さんが足を交互に上げ下げしているのが目に入りました。足をゆったりと片足ずつ上げ下げしているのでした。右に…、左に…、右に…、そして左に…と。まるでその様子は、湿原にたたずむ鶴のようでした。

 駆け寄った中田先生は真琴さんの足下を見て驚きました。なんと真琴さんは冷たく濡れたタイルの上に、靴下のまま出てきているのでした。きっと真琴さんは、カッパが脱げなくて困っている一年生の健太さんをみつけたのでしょう。そして、自分が内履きを履くよりも先に、そう、真っ先に健太さんのもとへ駆けつけたに違いありません。
 中田先生は胸が痛くなり、思わず真琴さんにこう声をかけました。
「ありがとう。ありがとう。冷たいでしょう。この子はあなたの弟なんだ?」
「ううん。」と首を横に振ります。
「それじゃ、同じ町内の子なんだ?ありがとうね。」と言うと、また
「ううん。」と首を横にふります。
そして真琴さんはこう答えました。
「全然…私…知らない子」そう小さく答える真琴さんの声は、寒さに震えていました。
 中田先生は、カッパが脱げて顔が現れてきょとんとしている一年生に向き直り、しゃがんで声をかけました。

「優しいお姉ちゃんだよね。よかったねえ。こんなにも優しくしてもらったこと、こんなにも優しいお姉ちゃんのこと、忘れたらだめだよ。しっかりしっかりと、ずっとずっと覚えておいてね。」と声をかけるばかりでした。

 真琴さんの靴下は、濡れて水が染みこんできていました。そして濡れた部分が、にぶく光っていました。
 中田先生には、この真琴さんの靴下の光が、この世の中のどんな宝石よりも光り輝いている貴いものに思えて仕方がありませんでした。

〜白山市立蕪城小学校のある日から〜
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