新種化石11「桑島化石壁産出の単弓類化石に学名がつきました」

ページ番号1002519  更新日 2022年2月8日

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アメリカの国際学術誌「Journal of Vertebrate Paleontology」で、2016年3月22日に論文がオンライン公開され、Montirictus kuwajimaensis(モンチリクタス・クワジマエンシス)の学名がつきました。

学名:Montirictus kuwajimaensis
名前の構成:属名(Montirictus属)+新種小名(kuwajimaensis)
意味「桑島の山の口」
「Mons」(モンス)は「山や大きな岩」、「rictus」(リクタス)は「口やあご」
「kuwajima」(クワジマ)は「桑島」、「ensis」(エンシス)は「地名の接尾辞」

写真:Montirictus kuwajimaensis(モンチリクタス・クワジマエンシス)

【左上顎頬歯】
歯の長径:約6ミリ
短径:約5ミリ

(学名を担うホロタイプ標本)

研究の経緯

桑島化石壁からは、現在までにおよそ250点ものトリティロドン科単弓類の化石が発見されていますが、それらは全て歯の化石です。一方、世界で発見されているトリティロドン類は、基本的に骨格が残っており、記載や分類も頭骨などの形態に基づいたものでした。そこで、著者らは「歯の形態のみで分類ができないか」という着想をもとに、トリティロドン類の分類を再検討しました。

そして、今回、中国やロシア、アメリカ、イギリスなどで、トリティロドン類の歯の観察を行い、桑島産トリティロドン科化石のものと比較検討した結果、他のどのトリティロドン類とも歯の形態が異なるこがわかり、新属新種のトリティロドン科単弓類“モンチリクタス・クワジマエンシス”として米国古脊椎動物学会誌「Journal of Vertebrate Paleontology」に掲載されることになりました。

モンチリクタス・クワジマエンシスについて

分類:単弓類 キノドン類 獣弓類 哺乳形類 トリティロドン科
命名者(論文の著者):松岡廣繁(京都大学・助教)、楠橋直(愛媛大学・助教)、イアン・コルフェ(ヘルシンキ大・研究員)
推定全長:不明(イヌやネコ程度?)
食性:植物食
産地:石川県白山市桑島「桑島化石壁」
地層:手取層群桑島層
時代:白亜紀前期(約1億3000万年前)

新種の特徴

  1. 3列の咬頭(歯の突起)には、いずれも2つの咬頭が前後に並ぶ。
  2. 6つの咬頭以外、小さな咬頭は存在しない。ただし、小型のものと思われるものには、中央列最前部に痕跡的な咬頭が存在。
  3. 6つの咬頭がほぼ同じ大きさで、咬合面の形が平行四辺形。
  4. 両側の咬頭列の咬頭(1列目と3列目)は、「三日月形」を保つ。
  5. 歯の“連結構造”が発達している。
  6. 咬頭の側壁はフラットで、咬頭列間の谷間はV字型をなす。

単弓類について

現在の哺乳類、爬虫類、鳥のすべてを含む大きなグループを有羊膜類といいます。その中でも、爬虫類や鳥を含むグループは双弓類、哺乳類を含むグループを単弓類といいます。現在、生き残っている単弓類は哺乳類以外にいませんが、古生代や中生代には、いわゆる“哺乳類型爬虫類”と呼ばれる単弓類の仲間がいました。トリティロドン類もこの“哺乳類型爬虫類”と呼称されるようなグループの仲間です。

トリティロドン類について

単弓類は古生代ペルム紀に大繁栄しますが、ペルム紀末の大量絶滅で一気に数を減らしたことが知られています。中生代に再び放散を始めますが、恐竜の台頭もあり、多くの単弓類が三畳紀の間に絶滅してしまいました。トリティロドン類はその中でも唯一、白亜紀まで生き残った“哺乳類型爬虫類”でした。トリティロドン類は哺乳類と共通した特徴を多く持っていることから、哺乳類に非常に近縁なグループだと考えられています。ジュラ紀前期には世界中に広く分布し、比較的繁栄しますが、哺乳類の台頭もあり、ジュラ紀中期になると早くも衰退してしまいます。白亜紀におけるトリティロドン類の化石は、ロシアのキセノクレトスクス属と日本のモンチリクタス属以外に知られていません。

発見の意義と今後の展望

日本で哺乳類を除いた単弓類に学名がつくのは今回が初めての事例です。手取層群の分布地では、桑島化石壁の他に、岐阜県高山市荘川町福井県大野市下山からトリティロドン類の化石が発見されていますが、これらの化石を同定するうえで、今回の研究結果は大きな手がかりとなります。また、それまで植物食哺乳類の繁栄とともに、衰退していったと考えられてきた“哺乳類型爬虫類(哺乳類以外の単弓類)”ですが、モンチリクタスの発見はこれに反する唯一の事例です。というのは、桑島化石壁では、ハクサノバータルやテドリバータルといった植物食哺乳類が産出しているからです。モンチリクタスの発見は、桑島化石壁(桑島層)がジュラ紀型の“古い”動物群から白亜紀後期に隆盛をほこることになる“新しい”動物群への移り変わりを知るうえで極めて重要な地点であることを裏付けるとともに、東アジアの中でも、特異な生態系が存在していたことを示す証拠となったのです。今後、モンチリクタスをはじめ、すべての分類群の研究成果を統合することで、桑島化石壁(桑島層)の生態系の全貌が明らかになっていくことでしょう。

問い合わせ

白峰化石調査センター
〒920-2502石川県桑島4-99-1
電話:076-259-2724 ファクス:076-259-2335
Eメール:h-kaseki@city.hakusan.lg.jp

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